| Research Abstract |
植物の根に大きな影響を与えうる重要な環境要素のひとつである根のガス環境について,近年多用されるようになった新たな園芸培土を用いて調べ,その条件の下で根の生理的機能を明らかにすることを目的として,培土中の気相における酸素および二酸化炭素の濃度を計測する方法の確立について,昨年度に続き検討を重ねた.その結果,とくに光照射による熱的外乱については,センサ本体の表面温度の変動が緩やかとなるようにセンサを被覆することにより,センサ内部でガス検出部と温度計測部の温度差を回避することができ,根の周囲のガス分圧を反映した出力値を得ることができた.次に,メロン等を植栽した硅砂,ロックウールスラブおよび軽石細粒にセンサを挿入して,酸素および二酸化炭素の分圧を計測した.その結果,通常の砂耕などでは培土の保水性と通気性とは相反し,灌水時には根の好気的環境が損なわれる傾向があるが,ロックウールスラブは高い保水性を有するにもかかわらず極めて通気性が高く,根周囲の好気的環境が安定的に維持され,これがロックウール耕において極めて良好な植物生育が得られる原因であることが推察された.また,培土に含まれる微量なガスについてエチレンなどの炭化水素ガスに焦点を絞り,昨年度の課題であったサンプル量をこれまで以上に減じることにより,根周囲のガス組成がサンプリングにより損なわれることを回避する方法の確立について検討を重ねた.しかし,現有のガスクロマトグラフ・システムでは検出感度を今以上に改善することが困難であり,サンプル量1mLを確保しつつ根周囲ガス組成を保存することを想定した新たなサンプリング装置を開発・装置化することが必要であることがわかり,その形状などについて検討した.以上の結果について,施設園芸の新たな栽培体系における生産環境を根のガス環境という観点から把握して生産環境の最適化制御を行うことを目指す,との目標を視野に入れて取りまとめた.
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