2004 Fiscal Year Annual Research Report
抗癌剤耐性に関連する因子の発現が動物の腫瘍に対する化学療法におよぼす影響
Project/Area Number |
16580251
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
三好 宣彰 鹿児島大学, 農学部, 助教授 (80229905)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠藤 泰之 鹿児島大学, 農学部, 講師 (90332600)
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Keywords | 動物 / 腫瘍 / 化学療法 / 抗癌剤耐性 |
Research Abstract |
今年度、本研究では間葉系悪性腫瘍に含まれる犬の皮膚肥満細胞腫及び軟部組織肉腫に対する抗癌剤耐性について免疫組織化学的に検索した。外科的に切除された化学療法前の皮膚肥満細胞腫7例について、P糖タンパク質は7例中5例、MRPは7例中6例、メタロチオネインは7例中1例で発現が見られた。予後の情報が入手できた7例中5例については、プレドニゾン・ビンブラスチン・ロマスチン・ドキソルビシンの投与を行った4例中2例が完全寛解となり、他の2例が自然死であった。プレドニゾロン・サイクロフォスファマイドの投与を行った1例は転移及び再発後に死亡した。次に57例の軟部組織肉腫について組織学的グレードに分類すると、グレードIが35.1%、グレードIIが5.6%、グレードIIIが19.3%であった。免疫組織化学的検索における評価が可能であった38例については、P糖タンパク質が86.8%、MRPが55.3%、メタロチオネインが60.5%で陽性を示し、P糖タンパク質の陽性が有意に高かった。グレード別の陽性率はP糖タンパク質及びMRPでは有意差が認められなかったが、メタロチオネインではグレードIIIにおける陽性率がグレードI及びIIよりも有意に低かった。犬の皮膚及び軟部組織の間葉系悪性腫瘍は一般的に化学療法が有効でないと考えられており、本研究で検索した症例ではP糖タンパク質の発現が高頻度であったことから、細胞外への薬剤排出能亢進による細胞内の抗癌剤濃度の低下が主な耐性機序であることが示唆された。さらにMRP及びメタロチオネインも多くの症例で発現しており、複数のタンパク質が重複して作用することにより強固な耐性を示す腫瘍が多いことが考えられる。しかしながら、これらのタンパク質についての免疫組織化学的検索結果と抗癌剤の効果及び予後との関係は、皮膚肥満細胞腫7例からは見出せなかった。
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