2005 Fiscal Year Annual Research Report
抗癌剤耐性に関連する因子の発現が動物の腫瘍に対する化学療法におよぼす影響
Project/Area Number |
16580251
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
三好 宣彰 鹿児島大学, 農学部, 助教授 (80229905)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠藤 泰之 鹿児島大学, 農学部, 講師 (90332600)
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Keywords | 動物 / 腫瘍 / 化学療法 / 抗癌剤耐性 / 免疫組織化学 / 乳腺 |
Research Abstract |
猫の乳腺癌において抗癌剤耐性に関連する因子であるタンパク質として、P糖タンパク質、多剤耐性関連タンパク質、メタロチオネインの発現を免疫組織化学的に検索するとともに、癌遺伝子c-erbB-2産物、変異型の癌抑制遺伝子p53産物、エストロジェンレセプターの発現に関しても同様に検索し、組織学的悪性度と予後との関連性を検討した。まず、組織学的悪性度をGrade I、II、IIIに分類して予後との関連性を検討した結果、外科的切除後の1年以内の死亡率がGrade Iで55.6%、Grade IIで50.0%、Grade IIIで90.9%であり、Grade IIIは大部分が1年以内に死亡すると考えられるが、Grade IおよびIIに関しては、組織学的な分類のみで予後の差異を推察することはできなかった。次に、免疫組織化学的検索の結果、P糖タンパク質が58.9%、多剤耐性関連タンパク質が72.6%、メタロチオネインが56.2%の検体で発現がみられ、各タンパク質は組織学的悪性度の上昇に伴って発現頻度が高くなる傾向があった。猫の乳腺癌は抗癌剤に対する自然耐性が高率にみられ、薬剤排出ポンプ機能の亢進や薬剤の無毒化作用により、化学療法を本質的にも困難にしていると推察される。しかしながら、これらのタンパク質の発現と予後との関連性はなかった。癌遺伝子c-erbB-2産物の陽性率は36.0%で、Grade Iで16.0%、Grade IIで34.3%、Grade IIIで69.2%の検体に発現がみられ、組織学的悪性度の上昇とともに発現頻度が高くなった。c-erbB-2産物を発現する検体の1年以内の死亡率は80%であり、予後決定因子のひとつとして重要であると考えられた。変異型のp53産物の陽性率は30.6%で、Grade Iが8.0%と低頻度であったが、発現の有無と1年以内の死亡率とには関連性がなかった。一方、エストロジェンレセプターの発現は2.74%と著しく低頻度であり、腫瘍細胞の増殖はエストロジェン依存性ではないことが明らかとなった。
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