2006 Fiscal Year Annual Research Report
抗癌剤耐性に関連する因子の発現が動物の腫瘍に対する化学療法におよぼす影響
Project/Area Number |
16580251
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
三好 宣彰 鹿児島大学, 農学部, 助教授 (80229905)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠藤 泰之 鹿児島大学, 農学部, 助教授 (90332600)
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Keywords | 動物 / 腫瘍 / 化学療法 / 抗癌剤耐性 / 免疫組織化学 / 乳腺 |
Research Abstract |
本年度は最終年度であるため総括を行った。まず、化学療法前の犬皮膚肥満細胞腫7例について抗癌剤耐性に関連する因子であるP糖タンパク質、MRP、メタロチオネインについての発現を免疫組織化学的に検索し、続いてプレドニゾロン、ビンブラスチン、ロマスチン、ドキソルビシンの投与により治療したが、因子発現と抗癌剤の効果および予後との関係を明らかにすることはできなかったため、さらに30例の症例を加え、継続して研究を実施している。 次に57例の犬軟部組織肉腫について組織学的グレード分類と免疫組織化学的に抗癌剤耐性関連因子発現を検索し、P糖タンパク質を介した耐性機序が主体であることを示唆したが組織学的グレードとの関連性は低かった。さらにMRPおよびメタロチオネインなどの複数の因子が重複して作用してより強固な耐性を示すことが考えられた。 猫乳腺癌において抗癌剤耐性関連因子、c-erbB-2産物、変異型p53産物、エストロジェン受容体の発現に関して免疫組織化学的に検索し、組織学的悪性度と予後との関連性を検討した。猫の乳腺癌は抗癌剤に対する自然耐性が高率にみられたが予後との関連性はなかった。c-erbB-2産物を発現する症例の1年以内の死亡率は80%であり、予後決定因子のひとつとして重要であると考えられた。変異型p53産物発現と1年以内の死亡率とには関連性がなく、エストロジェン受容体の発現は低頻度であり、腫瘍細胞の増殖はエストロジェン依存性ではないことが明らかとなった。 動物の各種腫瘍において免疫組織化学的方法により抗癌剤耐性に関連する因子発現を検索することは、化学療法を含む治療計画に対して重要な情報になることは明らかであるが、猫乳腺癌におけるc-erbB-2産物発現と予後との密接な関係に類似するような予後因子のひとつになりうる候補は見出すことができず、今後も回顧的研究によるデータの蓄積と化学療法を実施している症例に対する形時的な検索が必要である。
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