2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16580264
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
高木 光博 鹿児島大学, 農学部, 助教授 (40271746)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊村 嘉美 鹿児島大学, 農学部, 助手 (40336326)
宮本 明夫 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (10192767)
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Keywords | ウシ / 胎盤停滞 / ホルモン / MMP |
Research Abstract |
我々はこれまでに、ウシの胎盤停滞発生メカニズムにおける内分泌学的因子の関与の有無を明らかにするために、胎盤組織中各種ホルモン濃度の推移を調べ、PGF2α、オキシトシンおよびオキシトシンレセプター等、子宮収縮に関与するホルモン群が分娩後の胎盤剥離に重要な役割を担っていることを初めて報告している。本研究では、これまでの胎盤組織中各種ホルモン濃度測定による検討に加えて、胎盤組織中のプロジェステロン合成関連酵素である、P450scc、3β-hydroxysteroid dehydrogenase(3β-HDS)およびSteroidogenic acute regulatory protein (StAR)のmRNA発現動態、および胎盤組織中のコラーゲン分解に関わり、胎盤停滞との関連性が強く示唆されているMatrix metalloproteinases(MMP)-2,-9、およびそれらのインヒビターであるTissue inhibitor of MMP(TIMP)-2のmRNA発現動態を測定して、それらの発現動態と、分娩後の胎盤剥離との関連性を詳細に検証することを目的とした。 自然分娩後のウシの胎盤節を、その胎子胎盤が自然剥離するまで、分娩直後、6時間後および12時間後まで採取した。また、屠場由来の妊娠子宮から同様に胎盤節を採取し、胎子の頭尾長からその胎齢を推測し、妊娠初期(胎齢0-3ヶ月齢)、中期(胎齢4-6ヶ月齢)および後期(胎齢7-9ヶ月齢)とした。得られた胎盤節組織は母体側と胎子側に分離し、RNA抽出、Dnase処理およびReverse transcription処理を行った後に、得られたDNAを用いたリアルタイムPCRを行い、βアクチンmRNA発現量に対する各因子の相対的mRNA発現量を求めて、妊娠期間中および分娩後の発現動態の推移を検証した。その結果、測定を行った3種類のステロイド合成酵素系mRNAの発現は、妊娠初期から分娩後にかけて母体胎盤よりも胎子胎盤において高いレベルで発現しており、中でもP450sccおよびStARは両胎盤組織において同様のmRNA発現動態で推移した。また、両胎盤組織中TIMP-2 mRNA発現は同様なレベルであったが、MMP-2とMMP-9 mRNA発現に関しては、妊娠期間中から分娩後に渡り、胎子胎盤組織中で母体に比較して約10倍高いレベルで発現していた。さらに、胎子胎盤におけるMMP-9とTIMP-2、母体胎盤におけるMMP-2とMMP-9のmRNA発現において、分娩を境とした劇的な発現パターンの変化が観察された。 以上の結果から、胎盤組織におけるプロジェステロン合成関連酵素群、およびMMP-2、MMP-9とTIMP-2活性はウシにおける妊娠維持や、分娩後の胎子胎盤の母体胎盤からの剥離に重要な役割を果たす要因の1つであることが示唆された。本研究により得られた成果は、現在論文として投稿準備中である。
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