2005 Fiscal Year Annual Research Report
酸性雪による越冬性植物の傷害発生機構の解明と耐性付与のための分子基盤の構築
Project/Area Number |
16580270
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
荒川 圭太 北海道大学, 大学院・農学研究科, 助教授 (00241381)
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Keywords | 大気汚染 / 環境ストレス / 酸性雪 / 越冬性植物 / 硫酸 / 細胞外凍結 / 傷害 / 冬小麦 |
Research Abstract |
本研究は、酸性雪による越冬性植物の傷害発生のメカニズムを明らかにすると共に、越冬性植物の分子育種による酸性雪耐性の付与・向上に関する分子基盤の構築を目的とする。これまでに、越冬性作物(冬小麦)が凍結融解過程で酸性物質(硫酸)の共存によって傷害発生が助長されることを明らかにした。本年度は、冬小麦個体の酸性雪ストレスによる傷害発生の分子機構について生理学的・生化学的な解析を始めるため、植物個体での酸性雪ストレスのシミュレーション実験系の構築、酸性雪ストレス後の再生長過程における傷害発生に関する研究等を試みた。 まず、構築した実験系にて様々な酸性凍結融解の条件を設定して冬小麦緑葉の傷害発生率などを比較した。その結果、硫酸溶液の存在下、細胞外凍結を伴う平衡凍結法や長期凍結法、繰返し凍結融解法でのみ冬小麦緑葉には顕著な傷害が発生することから、細胞外凍結時に硫酸溶液が未凍結水中で高濃度に濃縮されて著しく低いpHを示すことが冬小麦緑葉組織に傷害を与える原因のひとつに考えられた。 また、植物個体を用いて酸性雪ストレスをシミュレーションし、個体レベルでの傷害発生機構についても検証を始めた。酸性雪ストレス処理後、再生長条件(光照射有り)にて冬小麦個体を処理すると、成熟葉である第一葉ほど傷害が顕著に発生する傾向にあることが判明した。そのため、葉齢によって抗酸化活性に違いがあるか否かを検証している。 これまでの研究結果から、酸性雪は越冬作物の生産性や品質の低下を招く環境ストレス要因となる可能性が強く示唆された。しかし、これまでの研究成果は、酸性雪ストレスによる越冬性作物の傷害発生の分子機構を詳細に解明するまでにはまだ至っていない。そのため、今後も当研究課題に関連した生理学的・生化学的解析を継続し、酸性雪耐性の付与・向上に関する分子基盤の構築を継続して試みる所存である。
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Research Products
(10 results)