Research Abstract |
平成16年度に引き続き,古代エジプト王侯貴族が利用していた薬物(ファラオ天然薬物)から糖尿病や肥満症予防に有効と判断される伝承薬物および薬用食物を入手し,それら薬物の抽出エキスを作製,各種スクリーニング試験を経て肥満あるいは糖尿病予防効果に有望な素材を探索した. エジプト伝統薬として慢性の便秘症や糖尿病などの治療に用いられてきたコロシント(Citrullus colocynthis,果実)のMeOH抽出エキスについて,ショ糖負荷ラットにおける血糖値上昇抑制作用及びI型アレルギー反応即時相のin vivoモデルである受身皮膚アナフィラキシー(PCA)反応に及ぼす影響を検討したところ,有意な抑制作用を見出した.活性を指標に分離・精製し,主要cucurbitane型トリテルペン配糖体cucurbitacin E 2-O-β-D-glucopyranosideが活性成分であることを明らかにするとともに,新規cucurbitane型トリテルペン配糖体colocynthoside AおよびBを単離し,それらの化学構造を決定した. また,主にサハラ砂漠などに分布し,子宮出血や婦人病の治療に用いられるアンザンジュ(Anastatica hierochuntica,全草)のMeOH抽出エキスに,マウス初代培養肝細胞を用いたD-galactosamine(D-GalN)誘発細胞障害に対する強い抑制作用[Inhibition (%) at 30μg/ml:52.2±2.5]を認めたことから,肝保護作用成分の探索研究に着手した.その結果,新規骨格のベンゾフラノフラバノンanastatin AおよびBおよび新規ネオリグナンhierochin A-Cを単離,構造決定するとともに,含有成分について肝保護作用を検討したところ,anastatin AおよびBに強い活性を見出した.その活性強度は,10μMにおいて,肝保護作用物質として広く用いられているフラバノリグナンsilybinよりも強いことが判明した. その他,エジプトを含むアフリカ,中近東およびアジア諸国に分布する植物で,マラリアや肝炎の治療に用いられているDichrocephala integrifolia(地上部)の生物活性成分の探索を行い,新規pseudoguaiane型セスキテルペンとその二量体などを単離,構造決定するとともに,マクロファージからのリポ多糖(LPS)刺激による過剰な一酸化窒素(NO)産生抑制作用のあることを明らかにした.以上,平成17年度の当初計画についてほぼ達成したものと考えられる.
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