Research Abstract |
培養ヒト脳微小血管内皮細胞が合成するプロテオグリカン分子種を同定し,併せてそのグリコサミノグリカン糖鎖の統制を調査し,周皮細胞の結果と比較した。 1.RT-PCRでプロテオグリカンコアmRNAを調べたところ,ヒト脳微小血管内皮細胞において,パールカン,シンデカン-1,シンデカン-3,シンデカン-4およびビグリカンコアmRNAの発現が認められたが,シンデカン-2,バーシカンおよびデコリンコアmRNAの発現は認められなかった。周皮細胞では,パールカン,シンデカン-1,シンデカン-3,シンデカン-4,ビグリカン,バーシカンおよびデコリンコアmRNAの発現が認められた。 2.^<35>S-アミノ酸標識コア蛋白のSDS-PAGEによる分離およびWestern blot分析の結果から,内皮細胞が合成するプロテオグリカン分子種がパールカンおよびビグリカンであり,シンデカン-1,ビグリカンおよびデコリンを主要分子種とする周皮細胞とは異なっていることが明らかになった。 3.グリコサミノグリカン糖鎖の特性は,コンドロイチン/デルマタン硫酸よりもヘパラン硫酸において著明であった。すなわち,ヒト脳微小血管内皮細胞のパールカンが結合しているヘパラン硫酸糖鎖は既報のブタ大動脈およびヒト臍帯動脈のものと比較してN-硫酸化が明らかに高度であり,二糖単位GlcA/IdoA(2S)-GlcNSが全二糖単位の15%を占めた。一方,ヒト脳微小血管周皮細胞では,ヒト脳微小血管内皮細胞に比べ,さらにN-硫酸化が高度であることも分かった。 以上より,脳微小血管を構成する内皮細胞および周皮細胞は,それぞれ異なる分子種を発現し,しかも特徴ある構造を有するヘパラン硫酸を結合したパールカンおよびシンデカン-1をそれぞれ合成していることが示された。このような特徴あるプロテオグリカンは,脳微小血管における内皮-周皮相互機能調節に寄与するものと推察される。
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