2004 Fiscal Year Annual Research Report
硫酸化グリコサミノグリカン鎖の生合成機構と発現制御機構の解析
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16590075
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Research Institution | Kobe Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
北川 裕之 神戸薬科大学, 薬学部, 助教授 (40221915)
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Keywords | 糖転移酵素 / コンドロイチン硫酸 / 細胞質分裂 / 多核 / プロテオグリカン / 線虫 / 硫酸基転移酵素 / 先天性脊椎骨端異形成症 |
Research Abstract |
硫酸化グリコサミノグリカンは、様々な細胞増殖因子や細胞外マトリックス成分と相互作用し、細胞接着、移動、増殖、分化、形態形成といった様々な細胞活動を制御している。これら硫酸化グリコサミノグリカンの機能発現は、生合成によって厳密に調節されていると考えられてきた。最近になって我々を含む複数の研究グループによって、硫酸化グリコサミノグリカンの生合成に関与する糖転移酵素や硫酸基転移酵素遺伝子が殆ど同定された。本年度は、硫酸化グリコサミノグリカンの中でもコンドロイチン硫酸の生合成機構の解析と、コンドロイチン硫酸の合成異常を示す生物を解析し、コンドロイチン硫酸の新たな機能を発見した。 1)線虫におけるコンドロイチンの合成機構と機能解析 我々は、線虫にも硫酸化はされていないがコンドロイチンが存在することを見いだしていたので、コンドロイチン合成酵素ファミリーの線虫オーソログの検索を行ったところ、コンドロイチン合成酵素遺伝子ChSy-Iとコンドロイチン重合化因子の遺伝子ChPFのオーソログと考えられるcChSyとcChPFの2種を見いだした。そこで九州大学の野村らとの共同研究によりRNA interference法を用いてcChSyやcChPFをノックダウンしたり、cChSyの変異体を作出した。その結果、cChSyやcChPFの発現が減少もしくは欠損した線虫は共に、コンドロイチンがほとんど合成されず、初期胚において細胞質分裂に異常をきたし、多核の胚ができて致死となることが明らかとなった。従って、生体内でcChSyとcChPFは共にコンドロイチンの生合成に必須であり、単独ではコンドロイチンの合成が出来ないこと、およびコンドロイチンが線虫の初期胚の細胞質分裂に必須であることを明らかにした。 2)コンドロイチン硫酸の硫酸化異常による疾患 最近、重篤な進行性の脊柱後側弯症状や、脱臼を伴う重篤な関節炎を特徴とする常染色体劣性遺伝病として、spondyloepiphyseal dysplasia(SED)Omani typeが報告された。原因遺伝子は、連鎖解析により、コンドロイチン硫酸のGalNAcの6位の硫酸化修飾を担うコンドロイチン6-O-硫酸基転移酵素-1(C6ST-1)であることが示唆された。SED Omani typeの患者では、C6ST-1の塩基配列の911番目のGがAに変異しており、その結果、アミノ酸配列の304番目のアルギニンがグルタミンに変化していた。そこで、患者の点変異体C6ST-1を構築し硫酸基転移酵素活性を測定した結果、硫酸基転移酵素活性は完全に消失していた。さらに、SEDOmani typeの患者から樹立した繊維芽細胞の合成するコンドロイチン硫酸鎖の構造や患者由来の尿中に存在するコンドロイチン硫酸鎖の構造を解析したところ、野生型と比べ、C6ST-1の変異によりコンドロイチン硫酸のGalNAcの6位が硫酸化された構造が激減していた。従って、SED Omani typeの患者では、軟骨発生や骨分化において、コンドロイチン硫酸のGalNAcの6位が硫酸化された構造が激減することにより、軟骨細胞の強度や弾性を維持できず、脊椎や椎間に異常をきたし、進行性の脊柱後側弯症状を引き起こしているのではないかと考えられる。
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Research Products
(2 results)