Research Abstract |
温度感受性SV40大型T抗原遺伝子を用いて精巣上体頭部上皮細胞株MEPC5の樹立に成功し,その細胞機能を詳細に解析した.透過電子顕微鏡を用いた形態学的評価により,MEPC5細胞は典型的な上皮細胞の形態を示し,正常組織由来の初代培養細胞と差異がないことが示された.細胞の増殖は,導入された温度感受性の大型T抗原タンパク質の発現で制御され,また,細胞増殖は接着阻害により抑制された.本細胞はME1やアンドロゲン受容体等精巣上体頭部のマーカータンパク質を発現しており,精巣上体頭部の生理機能,遺伝子発現,内分泌攪乱物質の作用機構を調べるための有用な細胞モデルになると考えられた. これまでに,研究代表者らはスタンフォードタイプのcDNAマイクロアレイと精巣セルトリ細胞を用いた研究から,内分泌攪乱物質ビスフェノールAによって誘導される遺伝子を数多く明らかにした.しかしながら,本系では評価している遺伝子数が約2,000個と少ないので,網羅的な評価をしているとは云えない.そこで,約12,000種類の遺伝子が評価できるGeneChipシステムを用いて,前実験と同様の条件下で再度評価した.その結果,約2,000種類の遺伝子の発現が変動することが明らかとなった.現在,得られた結果をクラスター解析ソフトおよびパスウエイ解析ソフトを用いて詳細に検討している. 温度感受性SV40大型T抗原遺伝子導入精巣セルトリ細胞は,非許容温度39℃で培養すると細胞増殖が停止し,細胞分化が誘導される.cDNAマイクロアレイを用いてこの過程で変化する遺伝子を調べた結果,p21^<waf1>やSelenoprotein Pが顕著に発現誘導されることが明らかとなった.
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