2005 Fiscal Year Annual Research Report
重金属毒性軽減因子としてのチオレドキシン還元酵素の機能解析
Project/Area Number |
16590093
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Research Institution | SHOWA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
原 俊太郎 昭和大学, 薬学部, 助教授 (50222229)
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Keywords | チオレドキシン還元酵素 / 重金属 / カドミウム / ヒ素 / 抗酸化酵素 / siRNA / 低酸素応答性転写因子 |
Research Abstract |
細胞内レドックス状態を制御するチオレドキシン還元酵素(TrxR)には、3種類のアイソザイムTrxR1、TrxR2、TrxR3が存在するが、このうちTrxR1は様々な刺激によりその発現が誘導されることが知られている。昨年度の本研究では、TrxR1がカドミウム(Cd)やヒ素(As)といった重金属により、Nrf2という転写因子の活性化を介し誘導されることを見出した。本年度では、HeLa細胞において、このTrxR1をsiRNAを用いることによりノックダウンした細胞株(TrxR1-KD細胞)を作製し、TrxR1の発現低下が重金属に対する防御にどのような影響を受けるかを検討した。その結果、低濃度のCdに曝露した場合、TrxR1-KD細胞の生存率はコントロール細胞に比べ低下しており、TrxR1の発現を抑制することによりCdに対する感受性が上昇することが示された。しかし、Cd濃度10μM以上の高濃度曝露条件下では、逆にTrxR1-KD細胞の方が生存率が高くなるという現象が観察された。同様の現象は細胞をAsに曝露した場合にも認められた。HeLa細胞において、TrxR1は低濃度のCdやAsに対してはその抗酸化作用を介して毒性軽減的に働くが、CdやAsの濃度が高くなり細胞の傷害が進んだ場合には逆に細胞死を促進するという、二相性の機能を持ち合わせている可能性が考えられた。一方、HeLa細胞を過酸化水素や無機水銀に曝露した場合には、細胞死促進機能しか観察されなかった。傷害が進んだ細胞を死に至らしめ排除することも生体全体としては重要な生体防御機構である。TrxR1は曝露濃度すなわち傷害の程度に応じて細胞の生死の方向性を決める重要な因子である可能性が予想された。さらに、本年度は、TrxRを含むチオレドキシン系により活性が調節されている低酸素応答性転写因子HIFについても解析を行い、HIFのisoformの1つ、HIF-3が脂肪細胞分化促進作用、抗腫瘍作用といった、他のisoformとは異なる作用をもつことを見出した。
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