2004 Fiscal Year Annual Research Report
高分子性生物毒素の裁判化学的検出・同定法の新規開発に関する研究
Project/Area Number |
16590103
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Research Institution | National Research Institute of Police Science |
Principal Investigator |
瀬戸 康雄 科学警察研究所, 法科学第三部, 室長 (10154668)
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Keywords | 生物毒素 / 裁判化学 / 検出・同定 / 質量分析 / タンパク質 |
Research Abstract |
本研究では、質量分析法による高分子性生物毒素の裁判化学的な検出・同定法の新規開発を行う。植物毒リシンの脅威が国際的に高まった状況を鑑み、リシンの分析法の確立を早急に目指す。 1.予試験法の整備 予試験法として免疫ストリップの性能を検証した。リシン、黄色ブドウ球菌腸毒素(SEB)、ボツリヌス毒素に対して、検出感度は概ね0.1μg/mlであり、高濃度領域で検出強度は低下した。小麦粉等の白い粉や有色試料は妨害を与えなかった。 2.MADLDI-TOF-MS分析法 Boyager DE-STRを用い、マトリックス:シナピン酸のLinearモードでの測定を行ったところ、Angiotensin I及びヒト組み換えインスリンからはm/z1296及びm/z5815の水素付加分子イオン([M+H]^+)ピークが、SEB及びリシンからはm/z28425及びm/z62594付近に[M+H]^+に相当するブロードなピークが認められた。 3.LC-MS分析法 Agilent 1100LC MSD Trapを用い、ワイドポアODSキャピラリーカラムとギ酸アセトニトリル溶媒の分離系によりESI検出を行ったところ、Angiotensin I及びインスリンからは分解能よくピークが検出され、その質量スペクトルにおいてm/z649の[M+2H]^<2+>ピーク及びm/z969とm/z1162の[M+6H]^<6+>、[M+5H]^<5+>ピークが認められた。SEBは、LC溶出後半にブロードなピークとして現れ、その質量スペクトルにおいてm/z836を中心とした多価イオン群が得られ、デコンボリューション処理の結果分子量28,364が得られ、文献値と分子量とほぼ一致した。リシンは、LC溶出最後半にテーリングしたピークとして現れ、その質量スペクトルにおいてm/z1000付近のピークを中心とした不明確な多価イオン群が得られた。 4.消化LC-MS分析法 リシンについて、グアニジン、DTTで変性・還元、ヨード酢酸でアルキル化後、トリプシン処理を行い、ワイドポアODSキャピラリーカラムとギ酸アセトニトリル溶媒の分離、ESI検出系のLC-MS分析を行った。LC上多数の消化ペプチドピークが得られ、各ピークのMS/MS分析により特徴的な開裂イオンが得られ、マスコット解析により、リシン由来の13ヶのペプチドが同定された。
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Research Products
(2 results)