2005 Fiscal Year Annual Research Report
高分子性生物毒素の裁判化学的検出・同定法の新規開発に関する研究
Project/Area Number |
16590103
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Research Institution | National Research Institute of Police Science |
Principal Investigator |
瀬戸 康雄 科学警察研究所, 法科学第三部, 室長 (10154668)
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Keywords | 生物毒素 / 裁判化学 / 検出・同定 / 質量分析 / タンパク質 |
Research Abstract |
本研究では、生物化学テロの脅威が国際的に高まった状況を鑑み、植物毒素リシンの現場検知から実験室分析に至る一貫した検査体制の構築を目指す。実験室分析においては、質量分析法による高分子性生物毒素の裁判化学的な検出・同定法の新規開発を行う。 1.現場検査法の確立 市販免疫ストリップの性能を検証した。リシン、黄色ブドウ球菌腸毒素(SEB)、ボツリヌス毒素の検知に対して、試料の加熱(80℃以上)、次亜塩素酸(0.001%以上)、ホルムアルデヒド(0.3M以上)の添加により偽陰性となることを確認した。また、金膜にラクトース系糖鎖を結合させたセラミド誘導体を吸着させたセンサーチップを用いてリシンの検知を検討したところ、表面プラズモン共鳴吸収分析により概ね10ng/mlの検出感度が得られた。 2.簡易検査法の確立 標品リシンは化学兵器禁止法で特定物質としてその使用等が規制されているので、標品がなくてもリシンの含有の検査が可能な電気泳動法を検討した。SDS-ポリアクリルアミドゲル(8%)電気泳動において、β-メルカプトエタノール還元前処理により31〜32kDaの2本のバンドを、非還元処理では60 kDa当たりに1本のバンドを与えた。マイクロチップ型電気泳動装置BioAnalyzerによる分析においても同様の結果となった。 3.リシンの簡易精製法の確立 文献のアガロースゲルを用いたアフィニティークロマトグラフィーによるリシンの精製法を検討したが、リシンの吸着は認められず、市販ゲルのロット差が原因と思われる。セファロースにp-アミノフェニルチオガラクトースを結合させたアフィニティーゲルを作製してリシンに対する吸着能を検討したところ、特異的な吸着が認められ、定量的にD-ガラクトースにより溶出されることを確認した。 4.LC-MS分析法 蛋白毒素の質量分析的同定法の検討を行った。SEBについて、グアニジン、DTTで変性・還元、ヨード酢酸でアルキル化後、トリプシン処理を行い、ワイドポアODSキャピラリーカラムとギ酸アセトニトリル溶媒の分離、ESI検出系のLC-MS分析を行ったところ、LC上多数の消化ペプチドピークが得られ、各ピークのMS/MS分析により特徴的な開裂イオンが得られ、マスコット解析により、SEB由来の10ヶのペプチドが同定された。LC-MSでのintact蛋白毒素の検出限界は、概ね3mg/ml(SEB)、6mg/ml(リシン)であった。
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Research Products
(2 results)