2005 Fiscal Year Annual Research Report
脳虚血性疾患時における血液脳関門の機能変動と脳保護機構
Project/Area Number |
16590123
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
出口 芳春 帝京大学, 薬学部, 教授 (40254255)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 純 帝京大学, 薬学部, 助教授 (80230415)
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Keywords | 血液脳関門 / 虚血動物 / 遅発性細胞死 / bFGF / FGFレセプター / FGFRs恒常発現株 / 脳卒中 / 脳保護機構 |
Research Abstract |
【目的】脳血管障害(脳卒中)は我が国の3大死因の1つである。高齢化社会を迎え、この疾患に罹る患者数はますます増加すると予測される。脳血管障害では、虚血の後に脳実質細胞が数日かけて死滅する遅発性細胞死が起こる。これまでに、グルタミン-カルシウム仮説など遅発性細胞死を誘発する様々なメカニズムが提唱されている。昨年度、申請者は脳虚血モデルマウスを作成し、一過性脳虚血時に脳内でFGFの受容体FGFR1が増加することを見出し、この現象が遅発性細胞死の中で神経細胞死を遅延させる脳保護作用であることを提唱した。この結果を受け、本年度は強力な神経細胞脳保護効果があるカチオン化VIPペプチド誘導体(cVIP)を脳虚血モデルマウスに投与することにより、脳内FGFR1の発現がどのように変化するかについて検討した。また、cVIPがどのようなメカニズムで脳内に移行するかについても併せて検討した。【方法】脳虚血動物はC57BL/6系マウスの両側頚動脈を10分間結紮することで作成した。このマウスにcVIPを投与し海馬CA1領域の神経細胞数の変化をギムザ染色法にて計数した。脳内FGFR1遺伝子の定量は定量的PCR法で行った。さらに、cVIPの脳移行機構を明らかにするためにラット脳還流法およびin vitro血液脳関門(BBB)細胞RBEC1を用いた輸送実験を行った。【結果および考察】cVIPを投与した脳虚血マウスにおける神経細胞数は、コントロールに比べ有意に多く、cVIP投与によって神経細胞死が有意に抑制されることがわかった。また、cVIP投与マウスにおいてFGFR1遺伝子は非投与群に比べ有意に増加しており、この現象は蛋白レベルでも確認された。一方、遅発性細胞死の速度が抑えられるにはcVIPが血液脳関門を透過し脳内に移行する必要がある。そこで、cVIPの脳移行について検討した。その結果、cVIPはBBBを透過し脳実質内に移行していることがわかった。さらにBBB細胞を用いた検討から、cVIPはBBBのカチオン性ペプチド輸送系に認識されて脳内に移行することが示唆された。以上の結果から、脳虚血性疾患時における脳保護効果のメカニズムにFGFR1の発現変動が関与することが示唆された。この結果は昨年度えられた成果をより強固に支持するエビデンスである。
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Research Products
(2 results)