2005 Fiscal Year Annual Research Report
アラキドン酸エポキシドによる血管増殖因子発現調節機構の解明
Project/Area Number |
16590129
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
今岡 進 関西学院大学, 理工学部, 教授 (60145795)
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Keywords | 低酸素(hypoxia) / VEGF / EET / ヒト臍帯動脈内皮細胞(HUAEC) / チトクロームP450 |
Research Abstract |
アラキドン酸のエポキシ体(EET)には4種類の異性体(5,6-EET, 8,9-ET,11,12-EET,14,15-EET)が存在し、チトクロームP450(P450)によって生合成される。EETは血管拡張や抗炎症作用など、様々な生理作用が報告されている。これまで、申請者はヒト臍帯動脈内皮細胞(HUAEC)を用いて、細胞膜からアラキドン酸を切り出す酵素であるphospholipase A2の阻害剤MAFPおよびP450への電子伝達酵素NADPH-P450 reductaseの阻害剤DPICが、血管内皮増殖因子(VEGF)の低酸素における誘導を阻害することを明らかにしている。VEGFは、癌細胞においては血管新生を誘導し、動脈硬化の進展にも関わる因子であり、これには細胞の低酸素応答が重要であることが明らかにされている。そこで、P450が生成するEETがVEGFの発現に影響を与えているのではないかと考え、この研究がスタートした。この研究では、EETのVEGF発現に与える影響のメカニズムを明らかにすることを目的としている。 HUAECにはCYP2C8というP450が存在し、11,12-EET. 14,15-EETを生成した。低酸素下で培養したHUAECにこれらのEETを添加すると、VEGFの発現量は増加した。一方、CYP2C8の阻害剤であるsulfaphenazoleを添加すると、VEGFの発現量は低下した。また、EETが加水分解されたジオール体を添加してもVEGFの発現には影響がなかった。さらに、低酸素におけるVEGFの誘導の鍵因子であるHIF-1の発現量を調べたが変化はなかった。このことは、EETはこれまで申請者らが明らかにしているVEGF発現調節化学物質とは異なるメカニズムで作用していることが示唆され、EET相互作用タンパク質(受容体など)の検索が必要であることを示している。
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Research Products
(4 results)