2004 Fiscal Year Annual Research Report
最初期発現遺伝子Arcを用いたフェロモンの受容機構と記憶機構の解析
Project/Area Number |
16590138
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
松岡 勝人 新潟大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助手 (40323969)
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Keywords | 鋤鼻系 / 副嗅球 / シナプス / 最初期遺伝子 / マウス / ブルース効果 / 嗅覚 / フェロモン |
Research Abstract |
脳が外界からの刺激をどのようなメカニズムによって記憶するのかは非常に興味深い問題である。私は本研究において、鋤鼻系神経路をモデルとしてフェロモン記憶をシナプスの形態変化で捉えようと研究を続けている。本年度はArcによる解析の前段階として記憶形成後の雌マウスにおけるシナプスの形態変化を経時的に詳細に観察した。 これまでに雌マウスに交尾時に形成される記憶に関しても電子顕微鏡を用いた形態学的な解析でこの記憶が副嗅球内に存在するシナプスの形態変化によって形成されていることを報告した。そのシナプスとは副嗅球僧帽房飾細胞層に存在する相反シナプスである。相反シナプスは興奮性と抑制性のシナプスが互いに逆方向に一組として存在している特殊なシナプスである。興奮性のシナプスと抑制性のシナプスはその形態から容易にかつ確実に区別することができる。電子顕微鏡でシナプス画像を取得し、画像解析装置により後膜肥厚のサイズを長さとして平面的に計測し、群間で比較検討した。その結果、非常に興味深いデータが得られたのである。交尾後(記憶形成後)およそ24時間で、まず興奮性のシナプスのサイズが有意に大きくなる。この変化は交尾後5日程度まで持続する。そして5日ごろから同様に抑制性のシナプスのサイズが大きくなるのである。統計学的な有意差は5日しか検出できないが、抑制性シナプスのサイズの増大傾向は20日頃まで持続する。そして50日後にはこの変化は完全に消失する。もちろんこの形態変化だけで雌マウスにおける長期記憶が維持されているとは断定できないが、長期記憶を考えるときに異なる二種類のシナプスの連続的な形態変化は非常によいモデルになるのではないかと考えている。
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Research Products
(1 results)