2004 Fiscal Year Annual Research Report
循環器疾患発症機構に果たす肥満細胞の主体的役割の解析
Project/Area Number |
16590193
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
塩田 直孝 島根大学, 医学部, 助教授 (60206050)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 徹也 島根大学, 医学部, 助手 (10346380)
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Keywords | 肥満細胞 / キマーゼ / 線維化 / 循環器疾患 |
Research Abstract |
肥満細胞は、サイトカイン、増殖因子、プロテアーゼなど多彩な生理活性物質を産生分泌する多機能炎症細胞である。肥満細胞は心血管壁にも存在しているが、循環器疾患発症機構に果たす肥満細胞の役割は不明であった。この研究課題では、遺伝的に高血圧を発症する自然発症性高血圧ラット(SHR)を用いて肥満細胞の解析を行った。これまでの解析により以下のことを明らかにできた。1)SHRでは生後2週齢の時点より既に心臓、血管壁、筋肉等に肥満細胞の局在が認められ、更にこれらの組織に局在する肥満細胞数は対照のコントロールラット(WKY)における数よりも有意に多く、SHRでは肥満細胞が高血圧発症前より心血管壁などの組織局所で増殖していることが明らかになった。2)心血管壁に存在する肥満細胞は、TNF-α、FGF2、TGF-β1などのサイトカインや増殖因子を発現していた。3)高血圧発症前の生後2週齢及び4週齢のSHRにおいて、心血管壁でのTNF-α、NF-kb、IL-6、c-kitおよびchymaseの遺伝子発現量はコントロールの正常ラット(WKY)での発現量よりも有意に高かった。以上の結果よりSHRは何らかの遺伝的要因により肥満細胞が増殖活性化しているモデル動物であることが解ってきた。特に高血圧発症前から心血管壁に存在する肥満細胞が増殖活性化していたことにより、肥満細胞の増殖活性化機構の異常が高血圧発症のトリガー機構に関連する可能性が示唆された(論文作成中)。今回、SHRにおいて明らかに出来た肥満細胞の増殖活性化の現象と高血圧発症機構との間の因果関係を更に明確にするために、高血圧発症前の生後2週齢の時点より、肥満細胞脱顆粒抑制薬であるトラニラストをSHRに10週間連続経口投与する実験を現在実施している。トラニラストにより肥満細胞の増殖活性化を抑制することにより、高血圧の発症開始時期を遅らせる、あるいは高血圧の上昇度を抑制できる可能性を現在検討中である。
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Research Products
(1 results)