2005 Fiscal Year Annual Research Report
ガス状化学物質曝露による中枢神経系への影響の多元的解析
Project/Area Number |
16590214
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health |
Principal Investigator |
上野 晋 産業医科大学, 医学部, 講師 (00279324)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笛田 由紀子 産業医科大学, 産業保健学部, 助手 (10132482)
吉田 安宏 産業医科大学, 医学部, 講師 (10309958)
石田尾 徹 産業医科大学, 産業保健学部, 講師 (90212901)
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Keywords | ガス状化学物質 / 1-ブロモプロパン / GABA_A受容体 / アフリカツメガエル卵母細胞 / 海馬スライス標本 / 脱抑制 / δサブユニット |
Research Abstract |
昨年度に引き続きガス状化学物質の一つであり,フロン代替溶剤として需要が高い1-ブロモプロパン(1-BP)の中枢神経系への影響について,亜慢性曝露モデル動物を作成し海馬神経回路への影響を中心に検討した。 Wistar系雄性ラット(8週齢)に1-BPを濃度400ppmにて6時間/日,5日/週にて12週間吸入曝露した(対照群は正常空気のみ)。曝露終了後,脳実質を取り出し大脳新皮質,海馬および小脳を分離し各々の部位よりtotal/messenger RNAを調整した。Messenger RNAはアフリカツメガエル卵母細胞にインジェクションし,発現産物から得られるGABA/カイニン酸誘発電流ついて対照群と曝露群で比較した。さらに各部位における神経伝達物質受容体の遺伝子発現をRT-PCR法により検討した。海馬についてはスライス標本を作製し,CA1ならびに歯状回領域における誘発電位に対するフィードバック抑制について比較検討した。 ツメガエル卵母細胞から検出されたGABA/カイニン酸誘発電流の濃度依存性には対照群と曝露群との間で有意な差は認められなかった。一方,海馬スライスを用いた実験からは歯状回領域でのみ曝露群にフィードバック抑制の減弱が認められた。さらに海馬においてGABA_A受容体のβ3およびδサブユニットが減少していた。以上の結果から,1-BPの亜慢性曝露では海馬歯状回領域でのフィードバック抑制の減弱,すなわち脱抑制を生じることが判明した。海馬歯状回領域では,β3およびδサブユニットを含むGABA_A受容体はシナプス外性(extrasynaptic)GABA_A受容体として存在し,低濃度のGABAにより常時活性化され神経細胞の興奮抑制に関与していることが報告されている。1-BPの亜慢性曝露ではこのシナプス外性GABA_A受容体が標的となり,結果として脱抑制を生じている可能性が考えられた。
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Research Products
(1 results)