2005 Fiscal Year Annual Research Report
スフィンゴシン-1-リン酸情報伝達系の生理学・病態生理学:個体レベルにおける解析
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16590221
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Research Institution | Kanazawa University Graduate School of Medicine |
Principal Investigator |
多久和 典子 金沢大学, 医学系研究科, 助手 (70150290)
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Keywords | スフィンゴシン-1-リン酸 / スフィンゴシンキナーゼ / 心筋障害 / 低分子量G蛋白質 / G蛋白共役型受容体 |
Research Abstract |
スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)は血漿、血清中に存在する脂質メディエーターであり、複数の6蛋白共役型受容体サブタイプを介して多彩な生物活性を発揮する。S1P産生酵素SPHKは、系統発生上酵母の段階から同定されており、その欠損により代謝・成長・熱ショック反応などの異常がおこることが報告されている。ほ乳動物における主要なS1P産生酵素とされるSPHK1のノックアウトマウスは野生型と変わらない表現型を示すことから、ほ乳動物においてはSPHK1は必須ではないと考えられている。一方、S1PならびにSPHK1の各種病態における役割については十分解明されていない。一方、S1Pは活性化血小板から大量に放出されることから、血小板活性化を伴うがん、心血管リモデリングなどの病態における関与が示唆されている。なかでも興味深いのは、虚血性心疾患の患者において血清中のS1P濃度が上昇しており、しかも重症度と相関するという最近の報告である。本研究において、S1Pの病態生理学的意義を明らかにする目的で、SPHK1のトランスジェニック(Tg)マウスを作出し、発現レベルの異なる複数の系統を得た。高発現の系統では心、腎、骨格筋、皮膚などの抽出液中、野生型と比し3〜30倍のSPHK活性を検出した。いずれの系統も雌雄ともに同腹野生型と比較して、成長、生殖、育仔、悪性腫瘍の自然発症に顕著な異常をみとめず、また生存期間も現時点において著変は観察されない。しかしながら、高発現系統において成長後、心筋線維化が出現し、加齢に伴い増悪することを見出した。これはAMP,・MHCなどの遺伝子高発現、低分子量G蛋白Rhp,Racの活性上昇を伴っていた。本研究の結果は、心筋リモデリングにおいてS1Pが重要な(悪い)役割を演じていることを示唆する。(論文投稿準備中)。
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Research Products
(3 results)