2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16590241
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
滝野 隆久 金沢大学, がん研究所, 助教授 (40322119)
|
Keywords | がん / 浸潤 / 細胞運動 / MAPK / JNK / ERK / MT1-MMP / 細胞外マトリックス |
Research Abstract |
FAK活性はJSAP1とP130casの共発現により増強され、その結果JSAP1とp130casのリン酸化を亢進した。JSAP1をグリオーマ細胞株U87MG細胞に遺伝子導入するとJNKのリン酸化が誘導され、fibronectin(FN)上での細胞運動が亢進された。しかし、JNK結合部位を欠質したJSAP1変異体発現では細胞運動の亢進は認められなかった。JSAP1を遺伝子導入した細胞の運動先端部にJNKとJSAP1の集積が認められ、細胞運動はJNK阻害剤により抑制された。また、脳腫瘍組織を用いてMAPK足場蛋白(JIP-1,-2,JSAP1)のmRNA発現を検討した結果、JSAP1の発現と悪性度に正の相関が認められた。JSAP1は運動細胞の先端部にJNKを誘導し、FAKを介したJNK活性化経路を亢進することにより細胞運動を調節していると考えられた。 また、HT1080細胞のI型コラーゲンおよびFN上での細胞運動はMMP阻害剤BB94により抑制され、ECM分解の減少、細胞接着斑の過形成と運動極性の喪失が認められた。一方MT1-MMPの過剰発現はECM分解、細胞運動と細胞接着斑のturnoverの亢進を誘導し、dominant-negative体の発現でその抑制が認められた。HT1080細胞のBB94処理は細胞接着により誘導されるERK活性化を抑制する一方で、FAKの自己リン酸化(チロシン397番)を亢進していた。以上の結果からMT1-MMPは細胞接着により誘導されるERK活性化、FAKの自己リン酸化を調節することにより細胞接着斑、細胞運動を制御していることが示唆された。 細胞運動時の極性形成・維持機序は方向性を持った細胞運動およびその延長線上にあるがん浸測・転移の機構を解明する上で重要である。JNK結合分子は細胞接着斑におけるJNKの局在と活性化部位を誘導することで細胞運動時の極性形成・維持を制御していると予想される。また、MT1-MMPによるECMの分解・再編をともなった微小環境の整備が細胞極性形成・維持に密接に関与していると推測される。ECMにおける極性を有した細胞運動とMT1-MMP活性発現の協調的な制御機構を解明することは、がんの浸潤・転移阻止の標的分子の同定、薬剤開発に貢献できるものと思われる。
|
Research Products
(5 results)