2004 Fiscal Year Annual Research Report
消化器がんにおける糖鎖のフコシル化異常のメカニズム解明
Project/Area Number |
16590245
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
三善 英知 大阪大学, 医学系研究科, 助教授 (20322183)
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Keywords | 肝癌 / 糖鎖 / フコシル化 / FUT8 / FX / GDP-fucose / AFP |
Research Abstract |
発がんに伴い、糖鎖構造が変化することは、古くから知られてきた。中でもコアフコースの付加は、肝癌の腫瘍マーカーとして知られるAFP(alpha-fetoprotein)のL3分画として、臨床応用されている。研究代表者は、そのフコースを転移するα1-6フコース転移酵素(FUT8)の遺伝子クローニングに成功した。しかしFUT8の遺伝子を用いた検討では、FUT8の発現は肝癌のみならず周囲の肝硬変組織でも発現上昇が見られた。次にフコシル化のドナー基質であるGDP-フコースの定量法を開発し、ヒト肝癌組織で検討したところ、慢性肝疾患組織に較べて肝癌で有意に増加していることがわかった。その原因としては、GDP-fucose合成酵素であるFXの遺伝子発現が増加していることも判明した。FXの過剰発現により、細胞内のGDP-fucose量が増加し、細胞全体としてのフコシル化も増強された。このGDP-fucoseは細胞内の量であり、実際にゴルジ内で基質として利用されるためには、ゴルジのトランスポーターによって運搬される必要がある。そこでGDP-fucoseトランスポーターの遺伝子をクローニンして、ヒト肝癌組織でその発現を検討したところ、肝癌組織において有意に増加していた。以上の検討から、肝癌細胞のフコシル化を規定する因子としては、FUT8、GDP-fucose量、GDP-fucoseトランスポーターの3者が考えられ、それらのバランスによってフコシル化が制御されていると考えられる。次に、肝癌以外の例として、膵癌症例で検討したところFUT8に加えて、もう一つのGDP-fucose合成酵素であるGMDの発現がフコシル化に重要な因子であることがわかった。現在、これらの過剰発現株やノックダウン細胞を用いて、フコシル化が塵加する生物学的意義を解析中である。
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Research Products
(6 results)