2005 Fiscal Year Annual Research Report
消化器がんにおける糖鎖のフコシル化異常のメカニズム解明
Project/Area Number |
16590245
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
三善 英知 大阪大学, 医学系研究科, 助教授 (20322183)
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Keywords | フコシル化 / Fut8 / GDP-fucose / 糖鎖 / がん / 腫瘍マーカー / 糖転移酵素 / グライコミクス |
Research Abstract |
フコシル化とは、糖タンパクもしくは糖脂質にフコースという糖が付加されることである。古くから、癌に伴って細胞および血清中のタンパク質のフコシル化が増加することが注目されてきた。そのフコースの糖転移に関与するフコシルトランスフェラーゼの1つFut8は、コアフコースという肝癌特異的な腫瘍マーカーであるAFP-L3分画に関与する糖鎖構造の合成を行う。約10年前に申請者らはFut8のタンパク精製に成功した(JBC 271, 27810-17, 1996)。またそのドナー基質であるGDP-fucoseのアッセイ系を確立し、肝癌におけるフコシル化にはドナー基質の合成系の方が重要であることがわかった(Cancer Res 63, 282-9, 2003)。以後、このフコースと癌の研究を続けてきたが、本研究費によってさらに以下の実績を出すことができた。まずFut8とのドナー基質であるGDP-fucoseの定量法を用いて、LAD-IIという遺伝性の糖鎖異常症の患者では、細胞内のGDP-fucoseが低下し、コアフコースが最も影響を受けたことをイタリアのグループとの共同研究で発見した(Glycobiology 15, 924-34, 2005)。また今日、難治性の癌の1つとして知られる膵臓癌の血清中にフコシル化ハプトグロビンが特異的に増加し、新しい膵癌の腫瘍マーカーになる可能性を示すとともに、その詳細な糖鎖構造を決定した(Int.J.Cancer in press)。通常、ハプトグロビンは肝臓で産生されるが、Fut8やGDP-fucoseの少ない肝臓で何故フコシル化が進むのか、今後の検討が待たれる。また数年前に、グライコミクスの手法を用いて、フコシル化の修飾を受けやすい表面タンパクとしてインテグリンを同定したが、同じ方法によって様々な糖転移酵素の標的分子を同定し、糖鎖の変化に伴う機能の違いを検討してきた(論文多数)。一方、Fut8のKOマウスでは著しい成長障害と肺気腫様の病理変化を認め、EGFのシグナルとTGF betaのシグナルからそれらの病態に関わる分子機構を解析した(PNAS 102 15791-6, 2005 ; JBC 281, 2572-7, 2005)。
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Research Products
(6 results)