2004 Fiscal Year Annual Research Report
非CpG-island領域シトシンメテル化による癌細胞多様性制御機構の解析
Project/Area Number |
16590278
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
北澤 荘平 神戸大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (90186239)
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Keywords | 非CpG-island / メチル化 / 遺伝子プロモータ / 膵癌 / 転写制御 / TrkA / 神経周囲浸潤 |
Research Abstract |
種々の遺伝子転写調節領域に存在するCpG islandのメチル化が、遺伝子発現を抑制的に制御することが知られている。私どもは、神経成長因子(NGF)の高親和性受容体TfkA遺伝子のプロモータ領域を解析し、典型的なCpGislandは存在しないが、非CpG islandに位置するAP-1類似配列(TGAGCGA)のシトシンメチル化が、種々の膵癌細胞や、手術症例の膵癌病巣において、TrkA遺伝子発現を制御するメカニズムについて検討した。 膵癌や大腸癌細胞株に関して、TrkA mRNA発現を定量的RT-PCRにて、TrkAプロモータのメチル化をバイスルファイト・マッピングにて解析し、比較検討を行った。膵癌・大腸癌培養細胞株では、5'側非翻訳領域にあるAP-1類似配列周囲のメチル化の蓄積に伴い、定常状態のTrkA発現は増加し、メチル化とmRNA発現に正の相関関係が見られた。また、TrkAプロモータのAP-1類似配列を欠いた変異体を作成して培養細胞に導入すると、変異のない原型より高い転写活性を示し、AP-1類似配列を介するシグナルはTrkA転写を負に制御することが示唆された。In vitroでメチル化処理プロモータを導入して比較検討すると、AP-1類似配列に変異のない原型プロモータでは、メチル化処理により転写活性が増加するが、変異体ではメチル化処理の影響を受けなかった。ゲルシフトアッセイでは、主としてc-jun二量体がAP-1類似配列に結合し、DNAメチル化はこの結合を阻害することを示した。従って、メチル化によるTrkAの発現促進は、非CpG領域に存在する負に働くAP-1類似配列へのc-Jun蛋白の結合を直接阻害することによって負に制御するシグナルが働かないために起こることが示唆された。 進行膵癌症例の病理組織において原発巣の中心部と神経周囲浸潤部とを比較検討すると、特に浸潤先端部でTrkA発現の増加とAP-1類似配列周囲のメチル化集積が認められた。以上よりTrkA遺伝子プロモーターの非CpGアイランドのDNAメチル化によりTrkA発現が促進し膵癌の進展に寄与しうることが示された。以上の研究成果は、AACR Special Conference in Cancer Research(2004年11月10-14日)にて報告するとともに、Oncogeneに投稿し採択された。
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Research Products
(7 results)