2005 Fiscal Year Annual Research Report
非CpG-island領域シトシンメテル化による癌細胞多様性制御機構の解析
Project/Area Number |
16590278
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
北澤 荘平 神戸大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (90186239)
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Keywords | 非CpG-island / メチル化 / 遺伝子プロモータ / 膵癌 / TrkA / Desmoid tumor / BAMBI / 転写制御 |
Research Abstract |
種々の遺伝子の転写調節領域に存在するCpG-islandのメチル化は、遺伝子発現を抑制的に制御することが知られている。私どもは、神経成長因子(NGF)の高親和性受容体TrkA遺伝子のプロモータ領域を解析した。TrkA遺伝子プロモータには、典型的なCpG-islandは存在しないが、非CpG-islandに位置するAP-1類似配列(TGAGCGA)が存在する。この部位のシトシンメチル化は、TrkA遺伝子の転写を、むしろ促進する現象を見い出した。私どもは、種々の膵癌細胞や手術症例の膵癌組織で、AP-1類似配列を含む領域のシトシンメチル化とTrkA遺伝子発現について解析した。膵癌におけるTrkAの発現促進は、非CpG領域に存在する負に働くAP-1類似配列へのc-Jun蛋白の結合を直接阻害することによって、負に制御するシグナルが働かないために起こることを証明した。 Desmoid type fibromatosisは、線維芽細胞様の紡錘形細胞が増生する腫瘍であり、通常は骨に分化することはない。私どもは胸壁発生したdesmoidの症例で、腫瘍の一部に骨形成巣を有する組織標本を詳細に解析した。Desmoid腫瘍成分は、骨形成のある部分、ない部分ともに、共通したβ-catheninの点突然変異を有した。その変異によりβ-catheninの分解が阻害され、核内にβ-cathenin蛋白が蓄積していた。間葉系細胞において、β-catheninは骨形成促進シグナルとして働くが、desmoid腫瘍では骨形成因子(BMP)の発現とともに、偽受容体BAMBIの高発現を認めた。BAMBIはTGFβ受容体superfamilyに属するが、細胞質内リン酸化ドメインを欠くため、BMPシグナルを遮断することにより、骨形成を抑制することがわかった。Desmoid腫瘍に生じた骨形成巣では、BMBI遺伝子プロモータのCpGメチル化によりBAMBI発現が低下していた。同一腫瘍内で、骨形成を示す部分に限局的にBAMBI遺伝子プロモータのメチル化が起こっていることを、病理組織標本よりのmicrodissection検体を用いて、bisulfite mapping法にて明らかにした。 以上の研究成果の一部は、第94回日本病理学会総会、第27回米国骨代謝学会議(ASBMR)にて発表するともに、学術誌Oncogene、J Bone Miner Resに報告した。
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Research Products
(6 results)