2005 Fiscal Year Annual Research Report
肺炎球菌感染防御における自然免疫リンパ球及びThl関連サイトカインの役割
Project/Area Number |
16590366
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
川上 和義 東北大学, 医学部, 教授 (10253973)
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Keywords | 肺炎球菌 / 自然免疫 / NKT細胞 / γδT細胞 / B1-B細胞 / IL-12 / IFN-γ / IL-4 |
Research Abstract |
肺炎球菌は細菌性市中肺炎の最も重要な原因菌であり、高齢者や基礎疾患を有する症例では重篤化することも少なくない。このような症例には、莢膜多糖体ワクチンの接種が推奨されているが、その予防効果はまだ十分とは言えない。このような背景から、より有効なワクチン開発のためにも、肺炎球菌に対する感染防御機構の解明が重要であると考えられている。 本研究では、マウス肺炎球菌肺炎モデルを用いることで、初期感染防御における自然免疫リンパ球、特にNKT細胞、γδT細胞、B1-B細胞の役割、そしてこれら細胞の機能発現におけるThl関連サイトカインの関与について詳細な解析を行ってきた。Vα14+NKT細胞を欠損したJα18KOマウスでは肺炎球菌感染の著明な悪化が観察され、これは好中球性防御反応が障害されるためと考えられた。Jα18KOマウスにおける好中球反応の低下及び感染の悪化はIFN-γを補充投与することでほぼ完全に回復することから、Vα14+NKT細胞がIFN-γ産生に深く関与することでその役割を担っているものと考えられた。このことは、Jα18KOマウスに野生型マウスからの肝臓単核細胞(LMNC)を移入することで好中球反応と感染抵抗性が回復したが、IFN-γ欠損マウス由来のLMNCでは全くその効果がみられなかったことからも支持された。Vα14+NKT細胞が直接IFN-γを産生することで機能しているのかについては、感染後の肺から分離したVα14+NKT細胞にIFN-γの発現が検出されなかったことから明らかではない。現在、Vα14+NKT細胞が他の細胞からのIFN-γ産生を増強することで機能している可能性も考えている。一方、γδT細胞、特にVγ4+細胞を欠損したマウスでは、Jα18KOマウスと同様に好中球反応及び感染抵抗性が著明に低下していたが、IFN-γの関与についてはVα14+NKT細胞ほどには認められなかった。B1-B細胞については、抗IL-4抗体の投与によって軽度感染抵抗性が低下したものの、CBA/Nマウスを用いた解析では、その関与を十分には明らかにすることはできなかった。 本研究を通して、肺炎球菌感染において、自然免疫リンパ球とThlサイトカインが好中球依存性の防御免疫反応を制御していることが明らかとなった。これらの知見は、より有効な肺炎球菌ワクチンの開発に重要な基盤的情報を賦与するものと考えている。
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Research Products
(3 results)