2005 Fiscal Year Annual Research Report
肺における生体防御因子としてのアルカリ性ホスファターゼの研究
Project/Area Number |
16590469
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Research Institution | Saitama Medical University College |
Principal Investigator |
小山 岩雄 埼玉医科大学短期大学, 臨床検査学科, 教授 (30153688)
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Keywords | アルカリ性ホスファターゼ / 生体防御 / リポ多糖(LPS) / 無毒化 / インターロイキン-6 / ノックアウトマウス / 炎症応答 / ラット |
Research Abstract |
本研究を行う発端は、生体内基質が明らかになっていないアルカリ性ホスファターゼ(AP)が、肺あるいは小腸という生体内と生体外の接点で高活性で存在することにある。内毒素であるLPSはリン酸モノエステル結合を有し、脱リン酸化することで毒性が減弱されることは知られており、以前よりin vivoおよびin vitroで小腸APが消化管経由で侵入してきたLPSに作用して、その毒性を減弱することを見出してきた。そして、昨年度の成果として、ラットへのAPを含有する肺サーファクタント粒子の合成分泌を促進させる去痰薬であるアンブロキソール処理は、気管経由で侵入してきたLPSの毒性を減弱することを見出した。 アメリカのワシントン大学のAlpers教授より小腸APのノックアウトマウスの調達ができた。そこで、肺経由の侵入の検討の前に、以前より行っている消化管経由でのLPSに対する小腸APについて、このノックアウトマウスを用いて検討した。ワイルドタイプに比較してノックアウトマウスで明らかにLPSに感受性を示し、LPS経口投与後の血中LPS濃度は上昇し、それに比例して顕著な白血球数の増加が認められた。LPS投与後の炎症マーカーであるインターロイキン-6の発現も、ノックアウトマウスで有意に増加していた。 今回の研究では、ラットAP精製標品の作製を予定していたが、ある企業よりウシ小腸AP精製標品が分与されたので、まずはこの精製小腸APをLPS処理したラットに静注した。LPSにより誘発された白血球数の増加は、精製小腸AP投与により減少し、LPSにより肝疾患を起こすことが知られているが、LPSにより上昇した血清ASTおよびALT活性もまた、小腸AP投与により有意に低下した。 これらの結果から、体外から侵入してくるLPSに対して、APが明らかに脱リン酸化を介して毒性の減弱化に関与していることが、今回の検討からも強く示唆された。
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