2004 Fiscal Year Annual Research Report
トリフェニル錫による催糖尿病作用の機序解析、特にATP及びcAMPが関与する系
Project/Area Number |
16590480
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
三浦 善憲 獨協医科大学, 医学部, 講師 (20049240)
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Keywords | トリフェニル錫 / インスリン分泌 / ATP / ADP / NADPH / 細胞内Ca^<2+> / 膜電位 |
Research Abstract |
上記研究課題を明らかにするため、ハムスターに塩化トリフェニル錫(60mg/kg・体重)を投与し、2日後に分離した膵ラ氏島、膵ラ氏島細胞を用いて実験を行い下記の結果を得た。 1)グルコース代謝中間産物(グリセルアルデヒト、ジハイドロキシアセトン)による細胞内Ca^<2+>及びインスリン分泌 トリフェニル錫投与群は対照に比し、15mMグルコース及び3mMグルコース存在下で10mMグリセルアルデヒド、10mMジハイドロキシアセトンによる膵ラ氏島からのインスリン分泌を低下させた。また、トリフェニル錫投与群は15mMグルコース及び10mMジハイドロキシアセトンによる膵ラ氏島細胞内Ca^<2+>の増加を低下した。(細胞内Ca^<2+>は、fura 2の蛍光変化を画像解析装置で測定) 2)膵ラ氏島内NADPH産生、膜の電位変化及びATP,ADPの測定。 トリフェニル錫投与群は、対照に比し、15mMグルコース刺激後のNADPH産生、膜の電位変化及びATP,ADPの産生量を抑制した。(NADPHは、自然蛍光変化を画像解析装置で、膜の電位変化は、パッチクランプ技術を用いて測定した。ADPはATPに変換後、ATP量ADP量は発光キットを用いてルミノメーターにより測定した。) 3)アルギニン、スルフォニルウレア剤(トルブタマイド)による細胞内Ca^<2+>の変化とインスリン分泌 トリフェニル錫投与群は、対照に比し、3mMグルコースと10mMアルギニンによるインスリン分泌及び100μMトルブタマイドと15mM:グルコースによるインスリン分泌と細胞内Ca^<2+>の変化には差が認められなかった。 以上の結果より、トリフエニル錫でハムスターに発症する糖尿病の機序に、膵ラ氏島B細胞のグルコース代謝後のエネルギー産生系(ATP, ATP/ADP比)の低下によるK_<ATP>チャネルに依存した膜電位の脱分極低下に関連した細胞内Ca^<2+>の増加不足によるインスリン分泌の低下が影響していることが示唆された。今年度の結果については、今データーをまとめている段階である。
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