2005 Fiscal Year Annual Research Report
間歇的マイクロウェーブ照射による骨試料からのDNA抽出の迅速化に関する研究
Project/Area Number |
16590553
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Research Institution | National Research Institute of Police Science |
Principal Investigator |
今泉 和彦 科学警察研究所, 法科学第一部, 主任研究官 (00356148)
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Keywords | 法科学 / 個人識別 / 骨 / DNA抽出 / マイクロウェーブ |
Research Abstract |
本研究は,骨試料からのDNA抽出における脱灰処理工程に間歌的マイクロウェーブ(以下,MW)照射を施して反応時間を短縮し,DNA型検査の迅速化を図るものである.試料としてウシの中手骨緻密質を約3mm角のブロック状に加工したものを準備し,0.5M EDTA溶液中で一定の温度条件下での間歇MW照射を行った.脱灰の進行度はマイクロX線撮影像におけるX線透過度より評価し,その後,ブロックからDNAを抽出した.抽出DNAについてウシミトコンドリアDNAコントロール領域を標的とした競合PCRによりamplifiable DNA量の定量を行い,PCRに対する質の良否を評価した.従来法では脱灰が56℃で行われ,熱によるDNAの低分子化が憂慮されていたことから,当初は37℃でMW照射を行い,同等の脱灰効果を得るべく検討を進めたが,出力等の条件を変更しても従来法には及ばなかった.そこで,温度条件を56℃とし,400WのMWを間歇照射する設定としたところ,照射後7時間目以降に脱灰の進行が速やかになることが確認された.なお,同時に温度条件を80℃としたMW非照射群についても検討したが,56℃の非照射群と脱灰作用に差は認められなかった.以上から,56℃を超える温度条件ではMW照射が脱灰処理の迅速化に特に有効であることが明らかとなったが,各脱灰条件で処理されたブロックより得られたDNA溶液中のamplifiable DNA量はMW照射の有無を問わずいずれも1立方mmあたり1,000コピーから10,000コピーの間にあり,得られるDNAの質という点で大きな差は認められなかった.この原因として,より脱灰が進んだMW照射群では,タンパク質分解酵素による溶解が亢進され,結果,多量のDNAが得られるものの,一方でDNAには低分子化等,質の低下が起きている可能性が考えられた.
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