2006 Fiscal Year Annual Research Report
形質細胞様樹状細胞を用いた肝炎・肝癌免疫細胞療法の開発
Project/Area Number |
16590592
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
考藤 達哉 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座助教授 (80372613)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹原 徹郎 大阪大学, 医学系研究科, 助教授 (70335355)
平松 直樹 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (30362700)
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Keywords | C型慢性肝炎 / 樹状細胞 / Toll様受容体 / RIG-I |
Research Abstract |
樹状細胞(DC)にはウイルス感知系であるToll様受容体(TLR)、RIG-I、MDA-5が発現しており、I型IFNや炎症性サイトカインなどの発現を介して先天免疫、獲得免疫の効率的な活性化に関与している。このシステムの機能低下はHCVの持続感染や、抗ウイルス療法における治療抵抗性の機序となる可能性がある。本年度はC型慢性肝炎におけるDCサブセットのTLR/RIG-I/MDA-5の発現と発現調節機序、機能及び病態における意義を解析した。 C型慢性肝炎患者のミエロイドDC(MDC)では、非感染者と比較してTLR2、TLR4、RIG-Iの発現は増加しているが、TLR3、MDA-5の発現には差を認めなかった。形質細胞様DC(PDC)ではTLR7、TLR8、TLR9の発現は両群で差を認めなかった。MDCにおけるTLR3とRIG-Iの発現はI型IFNやpolyI:C刺激により亢進したが、TNF-α、IL-6などの炎症性サイトカインやHCV関連蛋白の刺激ではTLR、RIG-Iともに誘導されなかった。C型慢性肝炎患者MDCでは、各TLRやRIG-Iに対するアゴニスト刺激によるIFN-βやTNF-αなどの産生は非感染者に比べ低下しており、TLR/RIG-I下流に強い阻害機序が存在する可能性が示唆された。このシグナル阻害機序を明らかにするために、1)polyI:C刺激MDCにおけるTLR/RIG-I下流シグナルの遺伝子発現を網羅的に解析し、2)TLR/RIG-Iのアダプター分子の発現をC型慢性肝炎患者と非感染者とで比較した。その結果C型慢性肝炎患者MDCではMAPK系とNF-κB系の発現が低下しており、TRIFの発現が低下していた。一方MyD88、IPS-1の発現は両者で差を認めなかった。以上より、C型肝炎患者MDCではHCV感染によりTLR/RIG-Iの発現が誘導されるにも関らず、TRIF、MAPK、NF-κB系シグナル伝達経路の阻害によって、I型IFNや炎症性サイトカインの誘導能が低下していた。C型慢性肝炎MDCにおけるTLR/RIG-Iの機能低下は、DCがHCV感染を十分に感知できず、効果的に免疫系を活性化できない可能性を示している。HCV NS3/4AプロテアーゼがTRIFを切断することが報告されており、実際のプロテアーゼ阻害剤による治療では、そのHCV複製抑制作用のみならず、DCにおけるTLR/RIG-I系の機能回復による免疫賦活作用も期待できることが明らかとなった。
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Research Products
(6 results)