2005 Fiscal Year Annual Research Report
サイトカインが胃に誘導するEGFリガンドの放出と前駆体C末領域が核内移行する意義
Project/Area Number |
16590614
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
城 卓志 名古屋市立大学, 大学院・医学研究科, 教授 (30231369)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東山 繁樹 愛知大学, 医学部, 教授 (60202272)
大原 弘隆 名古屋市立大学, 大学院・医学研究科, 講師 (80285212)
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Keywords | EGF / HB-EGF C 末端 / ADAM / 核内移行 |
Research Abstract |
胃癌の病原因子であるHelicobacter pylori感染により胃上皮細胞から産生されたIL-8を介しADAMを活性化したあと活性型HB-EGFを切り出す。切り出されたHB-EGFは、EGF受容体と結合後細胞増殖活性の亢進、細胞遊走能の活性化を惹起することをわれわれは、これまで明らかにしてきた。また最近、線維肉腫細胞においてADAMが細胞外ドメイン(活性型HB-EGF)を切り出したあと、HB-EGFのC末端細胞内ドメイン(HB-EGF-C)が核内に移行する。そのあと、DNAに結合していた転写抑制因子であるpromyelocytic leukemia zinc finger(PLZF)を核外にくみ出したあと、転写抑制が解除され細胞周期回転が亢進するというメカニズムである。しかしながら、胃上皮にこのようなメカニズムが存在しているかは、明らかにされていない。そこで今回HB-EGF-Cの核内移行のメカニズムが胃組織に存在するかどうかを調べるため、上皮細胞および胃癌組織検体を使って検討した。 (方法)胃癌細胞株(KATO III、GGIY)をphorbor ester 60nMで刺激し、EGF受容体リン酸化を免疫沈降にて調べた。ADAM阻害剤(KB-R7785)にてEGF受容体リン酸化の抑制の有無を検討した。また、HB-EGF前駆体のC末端に黄色蛍光色素をつけた発現ベクターをトランスフェクションし、phorbor ester 60nM刺激後経時的に蛍光顕微鏡にて観察した。胃癌細胞株を刺激後60分後HB-EGF-C抗体にて核内移行を調べ、KB-R7785にて核内移行の阻害を検討した。さらに、切除後ヒト胃癌組織もHB-EGF-C抗体を使って免疫染色し、実際胃癌組織にて核内移行のメカニズムの存在も検討した。 (結果)KATO III細胞は、phorbor ester刺激にて、15分をピークに一過性にEGF受容体リン酸化がみられ、ADAM阻害剤にてそのリン酸化は阻害された。HB-EGF-Cは、細胞膜から核内に経時的に移動した。KATO III、GCIY刺激60分後HB-EGF-C末端は、核内に染色された。進行胃癌組織も一部癌病変部分の核の染色が見られた。 (結論)胃癌細胞株および胃癌組織にもADAMが細胞外ドメイン(活性型HB-EGF)を切り出したあと、EGF受容体を活性化する経路とHB-EGFのC末端細胞内ドメイン(HB-EGF-C)が核内に移行する経路の二つの経路が存在する。ADAMは、この二つの経路の起点となる重要な蛋白である。したがって、ADAM蛋白の制御が可能となれば、細胞増殖、細胞遊走、細胞周期が制御可能となり、癌治療に役立つ可能性がある。
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Research Products
(2 results)