2005 Fiscal Year Annual Research Report
心不全の原因とされる分子異常を引き起こす因子に関する検討と治療への考察
Project/Area Number |
16590662
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
八尾 厚史 東京大学, 医学部附属病院, 助手 (70372381)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
絹川 弘一郎 東京大学, 医学部附属病院, 助手 (00345216)
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Keywords | 心不全 / 肥大 / 肺高血圧 / モノクロタリン / 胎児遺伝子 / アンギオテンシンII / バルサルタン / カルベジロール |
Research Abstract |
心不全の原因は多岐に渡るが、分子生物学的検討から病的肥大反応をもたらす刺激が心不全にいたる心筋障害をもたらすことが解っている。特に持続的機械的負荷が重要であるが、それ以外にも虚血、酸化ストレス、種々の体液因子が肥大反応を誘起することは、多くの動物実験や臨床研究によって示されてきた。今回の我々の研究課題は、これらの刺激が心不全のどうゆう異常の発生にかかわっているのかを解明し心不全治療に寄与しようとするものである。モノクロタリン投与によって作成した肺高血圧症ラットを用いて過剰な圧負荷下に不全となった右室心筋と圧負荷のかかっていない左室心筋に関する比較検討を行った。心重量はMCTラットで有意に重く、右室は著明に肥大し、面白いことに圧負荷のかかってない左室も肥大していた。また、分子生物学的肥大反応の指標とされる胎児期遺伝子の発現も右室のみならず左室心筋においても認められた。圧負荷のない左室における結果は、過剰に発現した体液性因子の影響によるものと示唆された。実際、アンギオテンシンIIの血中濃度は上昇し、血中BNPおよび心重量との正の相関し、さらにアンギオテンシンIIを正常ラットに慢性投与すると類似した遺伝子発現パターンを誘起した。しかしながら、そのAT1受容体拮抗薬であるバルサルタンを投与しても左室の遺伝子異常を改善するに至らなかった。一方、血中ノルアドレナリンも上昇していたがその受容体拮抗薬カルベジロールを使用しても遺伝子異常の改善を認めなかった。一見無効のように思われたが、両薬剤とも左室重量のみの改善と予後を有意に改善したことからレニンアンギオテンシン系と交感神経活性がやはり肥大反応の一面とともに肺高血圧性の右心不全病態の形成に関与していると考えられた。左室自体の分子生物学的肥大反応の機序は圧負荷以外の因子が複合的に引き起こしていると考えられ今後の詳細な検討が必要と考えられた。
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Research Products
(1 results)