2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16590713
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
和泉 徹 北里大学, 医学部, 教授 (80143775)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
猪又 孝元 北里大学, 医学部, 講師 (20311954)
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Keywords | 拡張型心筋症 / 自己免疫性心筋症 / G蛋白シグナル阻害 / β遮断薬 |
Research Abstract |
今回は抑制性G蛋白シグナル阻害による実験的自己免疫性心筋炎の両方向性修飾効果とその機序の解明を行った。〔背景並びの目的〕交感神経β2受容体刺激は、心筋での炎症病態の重要な修飾因子になりうることが知られてきた。特に、β1刺激との反応性の差異に着目し、その下流シグナルでの抑制性G(Gi)蛋白の制御に限局した実験系を構築し、Gi抑制が実験的自己免疫性心筋炎(EAM)を両方向性に修飾しうることを見出した。そこで、今回は、Gi阻害薬(百日咳毒素:PTX)によるEAMへの病態修飾効果について、その機序を解明することを目的とした。〔方法〕従来法に基づきEAMラットを作成した。PTXの投与時期により、ミオシン免疫と同時投与(導入期)および免疫後14日目(効果期)の2群に分けた。ラットは免疫後21日目に屠殺し、EAMの評価と心筋組織の病理学的およびサイトカイン発現を検討した。一方、CM2特異的T細胞株(CTL)を尾静脈より静注することでEAMラットを作成し、免疫後9日目に屠殺し同様の評価を行った。また、CLTを静注前にin vitroでPTX処理したうえでの、心筋炎惹起能を検討した。〔結果〕導入期におけるPTXの投与はEAMを悪化させたが、効果期およびCTL移入時での投与では逆にEAMを改善した(肉眼的心筋炎スコア(MS, PTX 0 vs. 4μg/匹))導入期2.5±1.0 vs. 4.0±0.0;効果期3.2±0.6 vs. 0.9±0.9;CTL移入3.2±0.8 vs. 0.4±0.7)。心筋組織中のサイトカイン発現では、IFN-γが心筋炎スコアと負の、IL-10は正の相関傾向を示した。一方、CTLはPTX処理により細胞増殖能には変化を来さなかったが、細胞移入による心筋炎惹起は有意に抑制された(MS:3.1±0.5 vs. 2.4±0.9)〔コメント〕PTXはその投与時期により、EAM発症に対して反対方向の修飾効果を示した。効果期のGi阻害は、EAM惹起の主体を担うTリンパ球の増殖を変化させず、局所接着および遊走の抑制をきたしたことが想定された。G蛋白シグナルは、心筋組織炎症の免疫制御において多様な修飾効果を有すると考えられる。即ち、自己免疫性心筋症の診断にはGi蛋白シグナルの修飾効果をみることが重要であると推量される。つまりある種のβ遮断薬治療にて反応しない拡張型心筋症の一部に自己免疫性心筋症が混在しているものと思われる。
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Research Products
(4 results)