2004 Fiscal Year Annual Research Report
化学兵器由来と考えられるジフェニルアルシン酸中毒の臨床学的研究と治療法の開発
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16590811
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
石井 一弘 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 講師 (70323293)
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Keywords | 有機ヒ素化合物 / ジフェニルアルシン酸 / 脳血流シンチグラフィ / 小脳症状 / ミオクローヌス / 振戦 |
Research Abstract |
茨城県神栖町飲用井戸水汚染によるDPAA中毒は、世界で最初の報告である。DPAA中毒の症状は、ミオクローヌス、振戦、小脳失調などの小脳-脳幹由来の症状と視覚異常、睡眠障害、記銘力障害などの後頭葉、側頭葉由来の症状であった。これら各症状は入院後(飲水中止後)1〜2週間で徐々に軽快し、退院後(飲水開始後)1〜2ヶ月で症状が増悪するという特徴を示していた。加えて小児では精神運動発達遅滞がみられた。高濃度汚染地域(A地区)と比較的高濃度汚染地域(B地区)が明らかになっているが、汚染濃度はA地区にてDPAA約15mg/L、B地区ではA地区の1/10程度の汚染であった。平成17年度末の曝露認定者135名の生活因子、臨床所見、検査所見、生体試料中DPAA濃度をデータベース化し、様々の解析を試みた。既述の各症状・症候の出現頻度をA地区(34名)、B地区(67名)で比較したところ、A地区で各症状出現が有意に高かった。(_X2検定:p<0.01)脳血流シンチグラフィの解析では(1)側頭・後頭部、(2)小脳、(3)側頭葉内側部(海馬付近)の血流低下がみられ、急性期の症状責任部位に一致していた。症状の改善に伴い脳血流低下が改善していることから、これら脳血流シンチグラフィは有機ヒ素中毒におけるバイオマーカーになる可能性が考えられた。また、複数の曝露者の尿中DPAA及び爪、毛髪中DPAAを測定したところ、曝露中止後約300日で尿中DPAAは検出されなくなった。爪からは曝露中止後3年以上経てもDPAAが検出された。これらの知見は、新たにDPAA中毒が発生した場合に有用な情報になると考えられた。DPAA中毒が発覚して約2年経過したが、後遺障害と考えられる症状も認められることから、住民健診を継続して行っていく必要がある。今後、DPAAの体内動態や中枢神経系への蓄積の有無、DPAAの神経細胞障害性など、本研究を通して明らかにする予定である。
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Research Products
(3 results)