2005 Fiscal Year Annual Research Report
多発性硬化症の疾患特異的マーカーの検出:髄液抗RNP-A2/B1抗体の意義
Project/Area Number |
16590833
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
黒田 康夫 佐賀大学, 医学部, 教授 (30117105)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
末岡 栄三郎 佐賀大学, 医学部, 助教授 (00270603)
末岡 尚子 佐賀大学, 医学部, 講師 (20321846)
雪竹 基弘 佐賀大学, 医学部, 講師 (10304891)
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Keywords | 多発性硬化症 / 自己抗体 / 抗hnRNP抗体 / 疾患マーカー |
Research Abstract |
我々は、多発性硬化症患者の約90%で脳脊髄液中に抗hnRNP-A2/B1が検出され、これが多発性硬化症の診断に極めて有効であることを報告した。この我々の成果は神経内科学領域で世界最高峰の米国神経学会の機関誌であるAnnals Of Neurologyに掲載された。この我々の研究に対する反響は大きく、国内では鹿児島大学神経内科学講座から共同研究の申し込みがあった。すなわち、この成果は佐賀大学の多発性硬化症の症例を検討したものであったが、鹿児島大学の170例に及ぶ症例について、病名を知らないで盲目的に検査し、抗hnRNP-A2/B1抗体が髄液で真に多発性硬化症にだけ特異的に検出されるかどうかを検討する研究の申し出であった。我々は、この共同研究において、多発性硬化症患者髄液の85%以上で抗hnRNP-A2/B1抗体が検出されること、この検出率が統計的に有意に多発性硬化症に特異的であるとの成績を得た。この研究成果は現在投稿中である。この共同研究において、我々はベーチェット病と慢性脱髄性多発神経炎においても抗hnRNP-A2/B1抗体が頻度は低いが検出されることを見出した。この両疾患は多発性硬化症と同様に自己面疾患と考えられており、さらに疾患マーカーも発見されておらず、現在多数例について検討中である。このことは、抗hnRNP-A2/B1抗体が必ずしも多発性硬化症に特異的でないことを意味している。従って、多発性硬化症とこの両疾患では抗体のhnRNP-A2/B1の認識部位が異なる可能性も考えられ、この点についてもhnRNP-A2/B1の異なる箇所のペプチドを作成して、抗hnRNP-A2/B1抗体の認識部位を決定する研究を進めている。これらの研究が完成すれば、抗hnRNP-A2/B1抗体は多発性硬化症だけでなく、ベーチェット病と慢性脱髄性多発神経炎においても診断マーカーとして利用できると思われる。
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