2004 Fiscal Year Annual Research Report
レチノイン酸および合成レチノイドによる血管内皮機能改善効果の検討と分子機構の解明
Project/Area Number |
16590898
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
菅原 明 東北大学, 大学病院, 講師 (90270834)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 貞嘉 東北大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (40271613)
金塚 完 東北大学, 大学病院, 助教授 (80214435)
竹内 和久 東北大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (40260426)
影近 弘之 東京医科歯科大学, 大学院・疾患生命科学研究, 教授 (20177348)
有馬 秀二 近畿大学, 医学部, 助教授 (60323010)
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Keywords | レチノイン酸 / 血管内皮細胞 / レチノイン酸受容体 / 血管新生 / レチノイド / 動脈硬化 |
Research Abstract |
近年レチノイン酸(RA)が血管平滑筋細胞において種々の抗動脈硬化作用を示すことが知られている一方で、その血管内皮機能に対する作用は不明の点が多い。今回まず我々は、RAのeNOS活性およびNO産生能に対する効果を検討した。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)およびラット肺血管内皮細胞(TRLEC-03)を培養後、蛍光顕微鏡下にてNO感受性蛍光色素DAF-2DAを用いて細胞内NOを測定した。いずれの細胞においても全トランス型RA(ATRA)処理(1 _M、48時間)にて、基礎およびアセチルコリン反応性のNO放出量は著増した。この産生増加はRA受容体(RAR)アンタゴニストおよびPI3K阻害剤wortmanninの投与により抑制されたことから、RARおよびPI3Kの関与が推定された。ウエスタンブロット法による検討にては、ATRA処理にてeNOSタンパク量は不変であった一方で、eNOSセリン-1177のリン酸化を著増させた。同様にATRAはAktタンパク量には影響を及ぼさずにAktセリン-473のリン酸化をPI3K依存性に著増させた。さらにATRAがRAR依存性にPI3Kp110_のタンパク量を著増させることも認められた。これらより、ATRAはRARを介してPI3Kp110_の発現を増加させ、それに伴いAktのリン酸化が生じ、リン酸化AktによりeNOSのリン酸化が誘導され、NO産生が増加したものと考えられた。以上の結果より、RAが血管内皮機能の改善効果を有する可能性が強く示唆されたことから、NO産生低下に伴う血管内皮機能障害が推定される病態に非常に有用であるものと考えられた。次に我々は、ATRAの血管新生に対する作用を、ヒト皮膚繊維芽細胞とHUVECの共培養系を用いて検討した。種々の濃度のATRA存在下で11日間培養後、形成された管腔の面積、長さについて分析を行ったところ、低濃度(1〜100nM)のATRA投与により管腔形成が有意に促進された一方で、1 _Mの高濃度ATRA投与下では管腔形成の抑制が認められた。以上の結果より、低濃度ATRAが閉塞性動脈硬化病変の治療に有効である可能性が強く示唆された。
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Research Products
(6 results)