2005 Fiscal Year Annual Research Report
肥満および糖尿病モデルマウスを用いた血栓傾向の病態機序の解明と治療法の基礎的検討
Project/Area Number |
16590934
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山本 晃士 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (90362251)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松下 正 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (30314008)
小嶋 哲人 名古屋大学, 医学部, 教授 (40161913)
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Keywords | 血栓症 / 肥満 / 糖尿病 / 線溶 / ストレス / 動脈硬化 / サイトカイン / 脂肪細胞 |
Research Abstract |
肥満・糖尿病とストレスは血栓症発症の危険因子として認識されているが、その分子生物学的メカニズムは解明されていない。本研究では肥満・糖尿病のモデルとして遺伝的肥満マウス(ob/obマウス)を用い、心因性ストレスを負荷したときの線溶阻害因子PAI-1の発現と組織内微小血栓形成について解析を行い、肥満・糖尿病におけるストレス起因性血栓症の分子メカニズムを検討した。 具体的には8週齢オスの肥満マウスおよび対照マウスを50ml用チューブ内に一定時間閉じ込めて拘束ストレスを負荷した後、血漿中の総PAI-1抗原量をELISA法にて、また組織RNA中のPAI-1 mRNA発現量を定量的RT-PCR法にて測定した。またin situ hybridization法にて組織内PAI-1 mRNA発現の局在について検討した。さらに病理組織学的な検索により、ストレス負荷後の腎糸球体におけるフィブリン沈着について検討した。 その結果、肥満マウスではストレス負荷2時間後に早くも著明な血中PAI-1抗原量の上昇と組織内PAI-1 mRNAの発現増加を認めた。特に、脂肪組織や心臓、腎臓におけるPAI-1 mRNA発現は、対照マウスに比べて顕著に増加していた。この傾向は20時間という長時間ストレスでも同様であった。in situ hybridization法による解析で、このPAI-1 mRNA発現は腎糸球体の内皮やメサンギウム細胞、心筋内微小血管内皮細胞、脂肪細胞等に一致して認められた。またストレス負荷後の肥満マウスでは腎糸球体微小血管内にフィブリン沈着を認めたが、対照マウスでは認めなかった。 以上より肥満およびインスリン抵抗性を有する個体ではストレス負荷によってPAI-1遺伝子発現が著明に亢進し、これが組織において微小血栓形成を促進させるひとつの原因と考えられた。これらの結果は、肥満・糖尿病患者におけるストレス起因性血栓症の病因・病態を考える上で重要な知見と言える。
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Research Products
(1 results)