2004 Fiscal Year Annual Research Report
AML1/RUNX1転写因子による造血発生制御メカニズムの解明
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16590955
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
奥田 司 京都府立医科大学, 医学研究科, 助教授 (30291587)
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Keywords | AML1 / Runx1 / Runx3 / 造血 / 遺伝子改変マウス / ES細胞 / 白血病 / 転写因子 |
Research Abstract |
白血病関連転写因子であるAML1/Runx1にはきわめて構造の類似したファミリー分子、AML2/Runx3とAML3/Runx2が存在する。これまでの遺伝子破壊実験からは、AML1が造血発生に関与するのに対し、AML2は脊髄後根神経や胃粘膜の増殖に、そしてAML3は骨形成においてそれぞれ中心的役割を果たしていることが示されてきた。こうした生物作用の相違はその構造の微細な相違にもとづくものなのか、あるいは単に発現パターンの相違に基づくものであるかはこれまで明らかにされていなかった。そこで本年度は、比較的相同性の低いC末端部分において機能重複が存在するか否かを、造血レスキュー実験によって検討した。まず、AML1分子のC末端側の約半分の領域をAML2/Runx3あるいはAML3/Runx2由来の相同部位と置き換えたES細胞をノックインの手法を用いて作製し(これらの人工的遺伝子をそれぞれAML1-2およびAML1-3と呼ぶ)、造血細胞への分化能を検討した。既に我々が報告しているとおり、AML1欠損ES細胞は造血分化能を失うが、ここでAML1を再導入するとin vitroでの造血能を取り戻す。実験の結果、AML1-2やAML1-3の再発現によっても、同様に成体型造血を再誘導することが明らかになった。また、AML1依存遺伝子であるG-CSFやMPOの発現も回復した。つまり、少なくともin vitroにおいてはAML2やAML3のC末端ドメインはAML1の相同部分と同様の生物活性を担いうることが示された。続いて同じコンストラクトを用いて、遺伝子改変マウスを樹立した。野生型AML1のcDNAをノックインさせた遺伝子改変マウスは正常に成育することが既に報告されているが、AML1-2やAML1-3のノックインの場合も同様にホモ接合マウスが生誕し、その遺伝子型はメンデル則に従い分離した。すなわち、AML2やAML3のC末端側ドメインは造血初期発生の誘導というAML1の生物作用を担うことができ、この機能重複はマウス個体レベルにおよぶことが示された。今後、これらのマウスを詳細に検討することによって、AML1ファミリー遺伝子群で保存されていない生物作用を明らかにし、ここに係わる新たな機能ドメインの特定へと研究を発展させてゆきたい。
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Research Products
(5 results)