2005 Fiscal Year Annual Research Report
AML1/RUNX1転写因子による造血発生制御メカニズムの解明
Project/Area Number |
16590955
|
Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine Graduate School of Medical Science |
Principal Investigator |
奥田 司 京都府立医科大学, 医学研究科, 助教授 (30291587)
|
Keywords | 白血病 / 造血幹細胞 / Runx / 転写因子 / 遺伝子改変マウス / AML1 / runt / CBFA1 |
Research Abstract |
ヒト急性白血病において高頻度に遺伝子変異の標的となるAML1/Runx1遺伝子は、造血関連転写因子をコードする。哺乳動物においては、AML1にはきわめて構造の類似したファミリー分子、AML2/Runx3とAML3/Runx2が存在することが知られている。ところが遺伝子破壊実験からは、AML1が造血初期発生において重要な役割を担うのに対し、AML2は脊髄神経機能や消化管粘膜増殖に、そしてAML3は骨形成においてそれぞれ中心的役割を果たしていることが示されてきた。こうした生物作用の相違がその構造の微細な相違にもとづくか否かについてはこれまで明らかにされていない。そこで当該研究では比較的相同性の低いC末端部分において機能重複が存在するか否かを、造血レスキュー実験によって検討している。まず、AML1分子のC末端側の約半分の領域をAML2あるいはAML3由来の相同部位と置き換えた分子を作製し(それぞれAML1-2およびAML1-3と呼ぶ)、これらの人工遺伝子をAML1遺伝子座にノックインさせた遺伝子改変マウスを樹立した。いずれのノックインの場合もホモ接合マウスが生誕可能なことから、AML2やAML3のC末端側ドメインは造血初期発生の誘導というAML1の生物作用を担うことができることが明らかになった。さらに検討をつづけたところ、AML1-2の場合と異なって、AML1-3のホモ接合マウスではAML1機能の不十分なレスキューによると思われる表現型を伴っていることを見出した。まず、T/Bいずれもリンパ球数が著減し、胸腺が小さくなることを認めた。しかし胸腺の組織構築には著変を認めず、CD4/CD8分画にも変化はなく、さらに脾臓T細胞のサイトカイン刺激による増殖反応には対照との差を認めなかった。加えて、AML1-3のホモ接合マウスでは乳幼児期間の死亡率が高いこと、そして体格が小さくなることも見出した。当初、骨格形成に重要なAML3の転写活性化作用がAML1-3によって干渉されている可能性が疑われたが、この仮説を支持する実験結果はいまのところ得られていない。今後、詳細に検討する余地が残されているものの、AML1のC末端ドメインのうちAML3に保存されていない部分のなかに、T細胞の増殖・維持や成長の制御に関わるサブドメインが存在していることが示唆された。本研究によって、AML1のもつ新たな生物作用が特定されるとともに、AML1の生物作用にはRunxファミリー間で保存されているものとそうでないものが存在することを個体のレベルで明らかにした。今後、この遺伝子自身が受ける転写調節機構の研究や、C末端に存在する新たな機能ドメインの検討を通じて、造血初期発生制御や白血病発症の分子基盤の解明が進むものと期待される。
|
Research Products
(2 results)