2005 Fiscal Year Annual Research Report
脂質ラフトを場とする免疫監視の破綻と自己免疫病発症
Project/Area Number |
16590976
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
本田 善一郎 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (70238814)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 毅 東京大学, 医学部附属病院, 助手 (50272555)
土屋 尚之 東京大学, 大学院医学系研究科, 助教授 (60231437)
本田 浩章 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 教授 (40245064)
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Keywords | FcgRIIB / 全身性エリテマトーデス / 遺伝子多型 / 脂質ラフト / Src family kinase |
Research Abstract |
抑制型低親和性IgG受容体FcgRIIBはB細胞及び骨髄球系細胞に発現し、これらの細胞に発現する細胞活性化型受容体群、B細胞受容体、高親和性IgG受容体FcgRI、低親和性受容体FcgRIIIからの陽性シグナルを負に制御して過剰な免疫反応を回避し自己免疫発症を抑える働きがある。FcgRIIB遺伝子欠損マウスは他の免疫抑制性遺伝子の欠失、過剰な抗原暴露等に際して容易に全身性自己免疫病態を発症する事から、代表的ヒト全身性自己免疫疾患である全身性エリテマトーデスにおける疾患感受性FcgRIIB遺伝子多型が検索され、京極、土屋、徳永らにより構造遺伝子変異FCGR2B c.695T>Cが見いだされた。同一塩基置換はFcgRIIBの膜貫通部ほぼ中央にある232IleをThrに変換する。本田らはFc受容体架橋による細胞活性化シグナルの発信機構と同受容体の脂質ラフト移行の関連を調べ、Fc受容体膜貫通部位が脂質ラフトの空間的融合を引き起こす事を証明し、さらに、脂質ラフトに常在するSrc型チロシンキナーゼの相互活性化が生じてシグナル発信が始まるという作業仮説を提唱していた。本田らは上述のFcgRIIB膜貫通部位多型が受容体の脂質ラフト会合を変化させてそのB細胞機能抑制の能力に影響を与える可能性を考え、FcgRIIB自然に欠失したヒトB細胞株、ST486に各々の受容体をレトロウイルスベクターを用いて発現し機能解析を行なった。その結果、Ile232Thrの置換によって静時及び種々の刺激下におけるFcgRIIBの脂質ラフトへの移行が減弱する事、同時にB細胞機能抑制の能力が減弱することが分かった。即ち、SLEに関連するFcgRIIB232Thr発現細胞では正常型232Ile発現細胞に比較してPIP3蓄積及びその下流のAkt活性下、カルシウム流入等が増強しB細胞の過剰な活性化が生じる。この観察はFcgRIIB232Thrを有するSLEにおけるB細胞の異常活性化の分子機構の一部を説明する可能性がある。FcgRIIB Ile232Thr置換は脂質ラフト会合に影響し機能を変容する事が示された初めての例であり、疾患関連多型分子の機能解析の重要性を例示する知見となった。
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Research Products
(1 results)