2004 Fiscal Year Annual Research Report
H.pylori感染による特発性血小板減少性紫斑病の発症機序の解析
Project/Area Number |
16590989
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
緒方 正男 大分大学, 医学部, 助手 (10332892)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 竜吾 大分大学, 医学部, 助手 (00325705)
村上 和成 大分大学, 医学部, 講師 (00239485)
後藤 和代 大分大学, 総合科学研究支援センター, 助手 (30381031)
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Keywords | ITP / H.pylori / EBV / BLC / TNF-α |
Research Abstract |
H.pylori感染によって引き起こされるITP(特発性血小板減少性紫斑病)発症機序は不明であるが、除菌有効ITPではPA IgGや抗血小板抗体の低下が認められる事から、H.pylori感染が抗血小板自己抗体の産生を引き起こすことは間違いないと考えられている。 我々は最初にH.pylori関連成分が直接的にリンパ球に影響を与えるか否かの検討を行った。2名の健常人の末梢血よりリンパ球を分離培養し、超音波破砕したH.pyloriの菌体可溶性蛋白を添加後、細胞を観察を行ったところ、1名では増殖を示すクラスターが観察され、1名では顕著な差は認められなかった。H.pylori感染者の全てにITPが引き起こされる訳ではない事実より、宿主側にその要因があると推測できる為、我々の「H.pylori感染者ではEBV蛋白が検出できる」という基礎データーを元に、H.pylori感染とEBVとの関連でITPの発症機序を検討する事とした。EBVはB細胞感染ウイルスであり、その異常によって自己抗体を産生し、ITPを引き起こす可能性が示唆されたからである。 まずH.pylori感染者と非感染者における胃の組織生検標本において、EBVの感染を免疫染色で検討を行ったところ、非感染者に比べて約8倍ものEBVの蛋白が検出された。 次にin vitroにおいてEBV感染細胞にH.pyloriを接着させたところ、EBVが潜伏感染から活性化サイクルに移行する際に認められる初期蛋白EA-Dが顕著に増加する事を、Western blottにて証明した。これらの結果より、H.pylori感染によってEBV感染B細胞が影響を受けて、その異常を誘導する事が示唆された。この事実はITPだけではなくH.pylori関連MALTOMAの病態解明にも繋がるか可能性を示唆する。 ここ数年、BLC(B-lymphocyte chemoattractant)の異所性発現が自己免疫疾患を誘導するという報告がなされており、BLCはそもそもBLR-1(Burkitt lymphoma receptor 1)として報告されている事から、自己免疫疾患及びEBV関連分子であると想定できる。またBLCはTNF-αに依存して発現するが、2004年にH.pylori菌体内TNF-α誘導蛋白(Tip)が報告された。今後はTipを用いて、H.pyloriによるBLCを介したITPの発症機序を検討していく予定である。
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