Research Abstract |
1.目的 抗Ku抗体は強皮症-多発性筋炎重複症候群患者血清中に特異的に見出された自己抗体であり,その対応抗原(Ku蛋白)は2重鎖DNA末端に結合し,転写調節,DNAの修復,複製に関わる.その語,Ku蛋白は2重鎖DNA存在下で種々の複製・転写因子をリン酸化するDNA依存性プロテインキナーゼ(DNA-PK)の補助因子であること,DNA-PKの欠損がSCIDマウスの原因であることが報告された.本研究では,1)DNA-PKの構造および機能とアポトーシスとの関連の追究,2)自己抗体産生へのアポトーシスの関与の追究,3)自己抗原エピトープの同定と抗体産生に関与するT細胞の抗原認識機構の解明,4)抗DNA-PK触媒サブユニット(DNA-PKcs)自己抗体の病因的および臨床的意義の追究を目的とした.平成18年度は,アポトーシスがDNA-PKの動態,機能に及ぼす影響を調べ,自己抗体産生との関連を追求した. 2.方法 Jurkat細胞に抗Fas抗体によりアポトーシスを誘導し,DNA-PKの動態を調べた. 3.結果 (1)アポトーシスを誘導後,DNA-PK複合体のうちDNA-PKcsがプロテアーゼCPP32の標的となり,230kDa蛋白(p230),160kDa蛋白(p160)と120kDa蛋白(p120)に限定分解された.限定分解に伴い,DNA-PK活性は低下した. (2)抗DNA-PKcs抗体陽性患者11血清のうちNS血清を除く10血清がp160と強く反応し,NS血清もp160と弱い反応をした.p230との反応は,TK, TB, YY, ZM血清で強くみられ,他の6血清との反応は弱かった.以上,DNA-PKcs上の複数のエピトープと自己抗体の反応様式の多様性とp160に主要な抗原決定基が含まれることが明らかとされた. 4.結語 抗DNA-PKcs抗体の臨床的意義および免疫学的特異性が明らかとなった.
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