2005 Fiscal Year Annual Research Report
放射線による冠動脈狭窄(心筋硬塞)発生の予防法の開発
Project/Area Number |
16591190
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 崇彦 東京大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (10171224)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
細井 義夫 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (50238747)
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Keywords | 心筋細胞 / 放射線(X線) / エンドセリン / ラット / 心臓 / 遺伝子発現 / 還元酵素 |
Research Abstract |
前年度の実験から、ラット新生児より採取した心筋細胞に2Gy、5Gy、10Gy、20Gy、および50GyのX線照射を行い、エンドセリン遺伝子mRNAの発現量について、RT-PCR法を用いて検討を行ったところ、X線の10Gyから50Gyの線量において、照射2時間後より8時間後にかけてエンドセリンmRNAの発現量が最大270%の増加を示した。しかし、エンドセリンのmRNAの発現上昇が、エンドセリンペプチドの産生上昇につながるかどうかを検討するため、培養心筋細胞に20GyのX線を照射後、12時間、24時間後の培養液を採取し、その中のエンドセリン分子についてELISA法を用いて定量を行った。しかし、培養液中には有意な量のエンドセリン分子の産生は認めることが出来なかった。本年度は、引き続き、心筋細胞へのX線照射によるエンドセリンペプチドの産生について検討を加えた。培養心筋細胞に20GyのX線を照射後24時間後の培地について、培養液をカートリッジ式逆相カラムを用いて約10倍に濃縮したサンプルについてエンドセリンペプチドの量をELISA法によって測定した。しかし、エンドセリンペプチドの産生は認めることができなかった。一方、X線照射後の培養細胞自身をエンドセリン特異的抗体を用いた細胞免疫染色を行ったところ、わずかではあるがエンドセリンの存在が認められた。このことは、X線照射によって、心筋細胞はエンドセリンを産生するものの、その量は極めて少ないことが推察された。しかし、1個の細胞での産生量が少ないといっても、心筋の組織レベルになれば、血管を収縮させるのに十分量のエンドセリンが産生されることが予想されたたため、ラットの新生児胸部へのX線照射により、組織中にエンドセリンの遺伝子およびペプチドの産生上昇が認められるかどうかについて実験を行った。ラットの3日齢の新生児の胸部に対し、20GyのX線を照射し、24時間後に心臓を摘出し、mRNAの発現をRT-PCRにて測定した。その結果、mRNAはやはり上昇するという結果が得られた。次に組織切片におけるエンドセリンの産生について組織免疫染色を行ったところ、エンドセリンペプチドの産生は認めることができなかった。現時点では、細胞レベルならびに個体組織レベルではX線照射によりエンドセリン遺伝子の発現上昇がおこることは間違いないと思われ、個体レベルでは、その後のさまざまな要因によりエンドセリンペプチドの産生につながる可能性があると考えられる。ヒトの場合、X線照射後、心筋梗塞を引き起こす患者は約2割であり、また、発生までの時間経過も患者それぞれにばらつきがあるため、さらに検討が必要であるが、エンドセリンにより血管平滑筋の増殖が高まることを考えると、X線照射に先立って、エンドセリン受容体遮断薬を一定期間投与することが、平滑筋増殖を抑制し、心筋梗塞発生の予防につながる可能性が考えられる。
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