2004 Fiscal Year Annual Research Report
c‐myc遺伝子転写抑制因子を用いた消化器癌の治療法の開発
Project/Area Number |
16591292
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
松下 一之 千葉大学, 大学院・医学研究院, 助手 (90344994)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
朝長 毅 千葉大学, 大学院・医学研究院, 助教授 (80227644)
島田 英昭 千葉大学, 大学院・医学研究院, 講師 (20292691)
松原 久裕 千葉大学, 大学院・医学研究院, 講師 (20282486)
野村 文夫 千葉大学, 大学院・医学研究院, 教授 (80164739)
落合 武徳 千葉大学, 大学院・医学研究院, 教授 (80114255)
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Keywords | c-myc遺伝子 / 転写抑制因子 / スプライシングバリアント / 癌治療 / アポトーシス |
Research Abstract |
c-myc転写抑制因子FIRの癌特異的スプライシングバリアント発現 (c-Myc抑制とアポトーシス誘導阻害による新しい癌進展メカニズム) はじめに:c-Myc蛋白の発現増大は多くの癌で認められ、c-mycの転写調節異常は癌進展に関与している。さらに最近の研究では、c-Myc蛋白を発現調節できるトランスジェニックマウスの系において、c-Mycの多寡により発癌と癌退縮を可逆的にコントロールすることに成功している。これらの実験結果は、c-myc転写抑制が癌治療の一つのターゲットとなり得ることを示唆している。 平成16年度の結果:本年度の研究成果によりc-myc転写調節因子FIRをHeLa細胞に強発現させたところ、c-Myc蛋白の発現抑制とそれに伴うアポトーシスが誘導された。さらにこのFIRによるc-Myc発現抑制とアポトーシス誘導は転写活性部位であるFIRのN末端を欠損させた変異FIRでは見られず、c-Mycの強発現によっても回避されることが示された。従ってFIRによるアポトーシス誘導はc-Myc発現抑制によるものと考えられた。一方、c-Mycを抑制するFIRは、予想に反してc-Mycが高発現している大腸癌でmRNA、蛋白レベルの両者で高発現していた。この原因を調べたところFIRの転写抑制部位であるN末端の欠損したスプライシングバリアントが癌特異的に高発現していることを見出した。さらにこのFIRスプライシングバリアントは正常型FIRのc-Myc抑制とアポトーシス誘導能をともに障害した。 これらの事実から、大腸癌ではFIRの転写活性部位におけるスプライシングバリアントの高発現によるc-myc遺伝子脱制御の結果c-Mycの発現抑制が起こらず、アポトーシス誘導が阻害されることが癌進展に関与していると考えられた。今回の結果はFIRが癌遺伝子として最も古くから知られているc-mycの大腸癌発現増大がどのような機序で起こっているのかに関する重要な新知見であると同時に、いままで報告されていない大腸癌化のメカニズムの一部である可能性がある。さらにFIRの機能メカニズムを解析することにより、将来の癌治療に応用可能と考えている。
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