Research Abstract |
本年度はまず基礎研究として細胞株を用いプロテアソーム阻害薬bertezomibに対する感受性を検討した。各種ヒト消化器癌細胞株を用いて、感受性をin vitroにて調べた(MTT, cell cycle analysis等、各種apoptosis assay)。免疫effector細胞に対する感受性の影響についても検討した。予備的な実験から、各種ヒト消化器癌細胞株を低濃度のbertezomibで前処理することにより、death receptorを介したTRAIL感受性が上がること、また、NK感受性の亢進が確認された。他の免疫エフェクター細胞に対する感受性の変化についてin vitroで調べるとともに、そのメカニズムについて検討した。その結果: 1)BortezomibとTRAILの単剤よりも両者併用することで,殆どのヒト食道癌(14株中11株;KE3, 4, 5, 6, 7, 810, TE8, 9, YES5, 6)や肺癌(NSCLC6株中4株;A549,H322,LK2,QG56)細胞株により強い相乗的抗腫瘍効果が見られた. 2)特に両者併用によりTRAIL抵抗性株であるKE3,KE4,TE8,TE9,A549,andH322に強い細胞傷害性を誘導することが見られた.Bortezomibはこれら細胞株にTRAIL感受性を増強させる可能で,TRAIL細胞傷害性はCaspase inhibltorz-VAD-fmkにより完全に阻害された。 3)Bortezomib処理によりBcl-2,BaxとXIAPの発現は有意な変化が見られず,TE8ではcIAPの発現は減弱した. 4)Bortezomib処理にてTRAIL receptor 1(DR4)と2(DR5)の発現は全細胞株に置いて増強されたが,一方ではDecoy receptor(R4)の発現増強はKE3, TE8とA549で見られた. 5)Bortezomib処理によりc-FLIP(Long)発現はKE3, KE4とA549において減弱され,TE8では増強された.それに対してc-FLIP(Short) isoform発現増強は実験した全細胞株において見られた. 6)BortezomibとTRAIL両者併用によりcleaved caspase-8 and -9増加はKE3, KE4, TE9とA549において見られ,TE8においてはcleaved caspase-8は著変せず,Bid蛋白発現は増加した.以上から,Bortezomibはmitochondondorial pathwayを介してTE8のTRAIL感受性を増強することが考えられた. よって、Bortezomibはヒト食道癌や肺癌細胞(NSCLC)に対するTRAIL感受性や細胞傷害性を増強することができた.そのメカニズムとしてBortezomibはこれら細胞のTRAIL receptors DR4, DR5の発現量を増加させ,TRAIL刺激によりCaspase-8 cleavageが強められたことと考えられた.一方ではCaspase-8活性増強はc-FLIP(L)発現レベルの減弱にも関係していることも示唆された.また,BortezomibのTRAIL増感作用はmitochondria pathwayを介して関与している可能性も認められた.
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