2005 Fiscal Year Annual Research Report
原発性非小細胞肺癌における腫瘍内低酸素状態と悪性形質の進展
Project/Area Number |
16591408
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
江口 圭介 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (90232941)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川村 雅文 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (70169770)
小林 紘一 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (80051704)
|
Keywords | 原発性肺癌 / 低酸素 / HIF-1α / VEGF / PTEN |
Research Abstract |
直接生体内で肺癌組織内の酸素分圧を測定することは困難であるが、酸素を取り込む臓器である肺に発生した癌に小型で細胞密度も少ない段階において、低酸素状態がどのように悪性形質の進展に関与するかを検討している。まず、原発性非小細胞肺癌切除標本のホルマリン固定標本を用いて低酸素刺激により発現の亢進するHIF-1αの発現を免疫組織学的に検討した。直径2cm以下の小型肺癌では77例中HIF-1α陽性は28例(36%)であるのに対して、2cmを超える36例では7例(19%)であり、腫瘍径が大きくなるほど陽性率が高くなるということはなかった。上皮内癌21例でも、7例には部分的ではあるがHIF-1α陽性の組織を認めた。一方細胞の密度の高い低分化癌はHIF-1αの発現は乏しかった。低酸素状態では、HIF-1αの発現によりVEGFの発現が増大するという関係が知られている。しかし免疫染色55例の検討では19例(35%)でこれに反するパターンを示した。がん抑制遺伝子産物であるPTENはHIF-1αを分解する働きがあり、癌でPTENの発現が減弱していると低酸素と無関係にHIF-1αの蓄積がおこる可能性がある。PTENの発現を調べた79例中36例(46%)でPTENの発現を認め、39例(49%)ではHIF-1αとPTENの発現には逆相関が認められた。In vitroで確認されている現象が臨床検体でどの程度確認できるかを検討した段階であるが、臨床検体では様々な因子によりそれらの機序がマスクされてしまう可能性もあり、例えば、細胞密集→組織内低酸素→HIF-1αの発現増大→VEGF発現→血管新生のような単純な図式は成り立たない可能性もあるであろう。免疫組織化学で仮説に矛盾しない結果を得たパラフィン切片標本から分子生物学的解析でその解明を目下試みている。
|