Research Abstract |
前年度に引き続き,カフェイン封入リポゾームの封入率をあげるように開発を進めたが,カフェインの性質上封入率を上げることはできなかった.次に,同様のリポソームにシスプラチンを封入し,ラットを用いて体内動態や抗腫瘍効果,更にカフェインとの併用での抗腫瘍効果について実験を行い,評価した.まず,ラットにシスプラチン製剤(以下,CDDP)とシスプラチン封入リポゾーム(以下,CDDP-L)をそれぞれラットに静脈内投与し,その血中動態を比較した.その結果,CDDPに比較し,CDDP-Lでは有意に血中滞留性に優れていた.次に,ラット骨肉腫細胞SOSN2を皮下移植したラットにCDDPとCDDP-Lをそれぞれ投与し,12時間後と24時間後の腫瘍内濃度,臓器内濃度(肝,肺)を測定し,比較検討した.12時間後ではCDDP群もCDDP-L群も同様のプラチナ濃度であったが,24時間後ではCDDP群でほぼ測定できない値であった一方で,CDDP-L群では12時間後よりも有意に腫瘍内濃度が上昇していた.これらの結果より,CDDP-Lは優れた血中滞留性を有しており,それにより腫瘍への集積性も優れていることがわかった.そして,骨肉腫を皮下移植したラットに対する腫瘍縮小効果を検討した.CDDPとCDDP-Lをそれぞれ1.75mg/kg静脈内投与し,その抗腫瘍効果を経時的に検討した.その結果,コントロール群に比べ,CDDP群もCDDP-L群もともに有意な抗腫瘍効果を認めた.CDDP群は投与後早期に腫瘍の縮小を認め,その後,腫瘍が増大していく経過をたどった.CDDP-L群では,腫瘍の増大を長くにわたって抑制していた.ただ,14日後の腫瘍のサイズは両群ともほぼ差は無かった.次に,カフェインとの相乗効果を検討するため,CDDPまたはCDDP-Lを1.75mg/kg静脈内投与後,カフェイン(100mg/kg/day)を3日間投与した群と7日間投与した群を設定し,比較した.4つの群のうち,CDDP-L投与後カフェインを7日間投与した群で,他の3群より有意に腫瘍抑制効果を認めた.以上より,CDDP-Lはそのものの効果としては,CDDPと同等ではあるが,腫瘍内への持続的な抗癌剤の徐放効果を有しており,そのためカフェインの連続投与でより効果的な抗腫瘍効果が得られるものと判断した.
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