2005 Fiscal Year Annual Research Report
培養細胞および神経細胞における麻薬刺激による遺伝子発現プロファイルの変化
Project/Area Number |
16591534
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
正田 丈裕 京都大学, 医学研究科, 助手 (60335263)
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Keywords | 麻薬 / 遺伝子発現 / アポトーシス |
Research Abstract |
麻薬の耐性・依存性および麻薬中毒患者における易感染性(免疫抑制)は、麻薬の長期投与によって引き起こされる生体の適応現象であると考えられている。これら神経系および免疫系の可塑的変化に遺伝子発現の変化が関与している可能性がある。 レチノイン酸によって分化させた神経系培養細胞SH-SY5Yおよび健康ドナーから供与された血液から抽出したT細胞をそれぞれ塩酸モルヒネ10μMで6〜12時間刺激した。刺激前後の細胞からそれぞれtotal RNAを抽出し、SMART PCR法を用いてdouble-strand cDNA群を作製した。刺激前後のcDNA群間でサブトラクションPCR法を行い、モルヒネ刺激によって細胞内で増減する遺伝子の候補を網羅的に取り出した。それらをベクターに組み込んだ後、大腸菌にトランスフォーメーションし、マスタープレートを作製した。さらに、コロニーハイブリダイゼーションによって陽性クローン、すなわちモルヒネによって発現が増減する遺伝子クローンをSH-SY5Yでそれぞれ106クローン、173クローン、T細胞でそれぞれ125クローン、57クローン選択、シークエンスし、BLAST解析によるホモログ検索によって同定した。これらを現在、Northern blottingにより確認している。 モルヒネによって発現誘導されるクローンの中で特徴的なものに、神経系細胞のSH-SY5Yからは抗アポトーシス作用を有する分子が、T細胞からはアポトーシス作用のある分子がそれぞれ数種類得られ、これはモルヒネが神経系細胞には抗アポトーシス、免疫系細胞にはアポトーシス効果を示す、というこれまでの報告と矛盾しない。現在、これらの分子が実際にアポトーシスに関与しているかどうかを解析中である。今後は、神経系と免疫系のモルヒネによる細胞応答の相違のメカニズムに迫りたい。
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