2006 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内シグナル伝達系の調節による急性腎不全治療法の開発
Project/Area Number |
16591542
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
高橋 徹 岡山大学, 医学部・歯学部附属病院, 講師 (40252952)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
溝渕 知司 岡山大学, 医学部・歯学部附属病院, 講師 (70311800)
森田 潔 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (40108171)
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Keywords | 急性腎不全 / 出血性ショック / ヘムオキシゲナーゼ / アポトーシス / 炎症 / 虚血-再潅流 / 酸化ストレス / ストレス蛋白 |
Research Abstract |
周術期管理学の長足の進歩にも関わらず、急性腎不全(Acute Renal Failre : ARF)の死亡率は依然として高い。現在のARFの治療法は血液浄化療法を始めとして、生体の恒常性を維持しながら腎機能の回復を待つ保存的療法であり、腎細胞機能の回復を促す積極的治療法は未だ無い。一方、近年、虚血再潅流等の酸化的ストレスによる細胞死、特にアポトーシスの分子機構には細胞内生存シグナルが関与することが明らかとなり注目を集めている。 申請者らはこれまで、ARFの新しい治療法を開発する目的で、腎虚血再潅流によるラット虚血性急性腎不全(Ischemic ARF : IARF)モデルを作成し、虚血腎にストレス蛋白:heme oxygenase(HO)が誘導され、HO活性を抑制すると腎障害が悪化することを報告した(Crit Care Med,2000)。さらに、ラットの必須微量元素であるスズ(SnCl_2)をこのモデルに投与すると腎尿細管細胞特異的にHOが誘導され、IARFに対する治療効果があることを示し、その効果がHOによる尿細管細胞のアポトーシス抑制作用によることを示唆した(Crit Care Med,2002)。本研究では、HO誘導をさらに臨床応用に近づけるために脱血によるラット出血性ショックモデルを作成し、蘇生後の肝、腎、肺におけるHO誘導と臓器障害の関係について検討した。その結果、HOの誘導が強く認められた腎、肝では組織の傷害・炎症が弱く、逆にHOの誘導が殆ど認められなかった肺では、組織の傷害・炎症が顕著であった。すなわち、HO発現と組織の炎症・傷害が逆相関の関係にあったことから、腎に誘導されたHOはその抗炎症作用、抗アポトーシス作用により出血性ショック蘇生後の腎傷害に対して、腎保護的に働いていることが示唆された。さらに、HOの誘導物質であるheme arginateの本モデルへの投与は、肺の傷害・炎症を改善した。このことから、heme arginateはHO誘導物質として急性肺傷害の新たな治療薬となる可能性が示された。
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Research Products
(2 results)