2005 Fiscal Year Annual Research Report
急性痛および慢性痛の疼痛機序解明と痛みの遺伝子治療を目指した基礎的研究
Project/Area Number |
16591543
|
Research Institution | OKAYAMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
溝渕 知司 岡山大学, 医学部・歯学部附属病院, 講師 (70311800)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横山 正尚 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教授 (20158380)
高橋 徹 岡山大学, 医学部・歯学部附属病院, 講師 (40252952)
中塚 秀輝 岡山大学, 医学部・歯学部附属病院, 講師 (70263580)
二宮 善文 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (70126241)
森田 潔 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (40108171)
|
Keywords | 急性痛 / 慢性痛 / 疼痛メカニズム / 難治性疼痛 / 遺伝子治療 |
Research Abstract |
本研究課題では、急性痛と慢性痛のラット疼痛モデルを用いて疼痛発生時の脊髄での遺伝子発現の変化をとらえることにより、急性および慢性痛の疼痛メカニズムを明らかにし、将来的に痛みの治療に応用することを目指して研究を行った。平成17年度に本研究課題に関して我々が得た結果の主なものは以下の点である。まず、慢性疼痛下における急性疼痛刺激(フォルマリン刺激)がもたらす影響を検討し、痛覚過敏状態下での急性刺激ではFOSの減少と相関して疼痛行動が抑制され、脊髄後角におけるbrain-derived neurotrophic factor(BDNF)およびCGRPの発現が有意に低下していることを見出した。この結果もふまえ、BDNFに主に着目し急性痛と慢性痛モデルで詳しく検討を行った。BDNF遺伝子はエクソンI〜Vの5つからなりスプライスバリアントmRNAが4種類生成される。急性痛のフロイントアジュバント炎症モデルでは、脊髄後根神経節(DRG)でのエクソンI, Vが著明に増加した。エクソンVはBDNF mRNAの合計を示しており末梢炎症性疼痛ではエクソンIがBDNF mRNAの増加に主に関与していることが考えられた。また、慢性痛のL5腰神経結紮モデルでは、L4DRGでは、エクソンVは結紮側で有意に増加し、エクソンI〜IVではエクソンIのみ増加した。L5DRGでは、エクソンVに有意な差はなかったが、エクソンI〜IVではIのみ結紮側が有意に増加した。BDNFは、末梢組織や神経の損傷時にDRGで産生され、一次ニューロンから脊髄後角への刺激伝達を修飾するといわれ、疼痛関連物質の中でも最も重要な物質の一つであると最近でも注目されている(Nature 438 : 1017-21,20O5)。我々の結果から、より効率的にBDNFの発現をコントロールすることで今後の痛みの治療に役立つ可能性があるを見出している。
|