2005 Fiscal Year Annual Research Report
チロシンキナーゼ活性抑制による疼痛治療法の開発に関する研究
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16591554
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
廣瀬 宗孝 京都府立医科大学, 医学研究科, 助手 (50275228)
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Keywords | チロシンキナーゼ / 局所麻酔薬 / 神経成長因子 / TrkA / リドカイン / 疼痛過敏 / 自己リン酸化 / PC12 |
Research Abstract |
神経細胞内におけるチロシンキナーゼ活性作用は、慢性疼痛の形成過程において重要な役割を持つことが知られている。そのメカニズムは、末梢組織で産生されたNerve Growth Factor(NGF)や神経伝達物質のBrain-derived neurotrophic factor (BDNF)が、それぞれの受容体であるTrkAやTrkBを介して慢性疼痛の形成に関わることが最近、明らかになってきた。TrkA、TrkBは受容体型チロシンキナーゼであり、慢性疼痛治療の有力なターゲットであると考えられている。 NGFはTrkAの細胞外部位に作用して、細胞内の活性化ループにおける自己リン酸化部位(666-SRDIYSTDYYR-676)のチロシン(Y670,Y674,Y675)を自己リン酸化する。これまで局所麻酔薬のリドカインが、同じ受容体型チロシンキナーゼのインスリン受容体の活性化ループに作用し自己リン酸化を抑制することを明らかにしてきたが、本研究ではTrkAに対しても局所麻酔薬が抑制作用を持つと考え、リドカイン、プロカイン、ブピバカインを用いて、NGF刺激によるTrkAのチロシンリン酸化に及ぼす影響、NGF刺激による神経突起発現に及ぼす影響、及びそれぞれの細胞毒性作用について検討した。 リドカインは400μM以上でNGF刺激によるTrkAの自己リン酸化とNGF刺激による神経突起発現を有意に抑制した。またブピバカインは40μM以上で、プロカインは4000μMで自己リン酸化と神経突起発現発現を有意に抑制した。リドカインとブピバカインは4000μMで明らかな細胞毒性を示したが、プロカインは4000μMでも細胞毒性を示さなかった。 400μMのリドカイン濃度は、浸潤麻酔や神経ブロック時の局所における濃度に相当し、臨床使用濃度の局所麻酔薬がTrkA活性の抑制作用をもつことが明らかとなった。局所麻酔薬のTrkA活性抑止作用は、浸潤麻酔や硬膜外麻酔による慢性疼痛を抑制する作用のメカニズムの一つである可能性が示唆された。
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Research Products
(4 results)